第133話「きらめき」
団長は剣を抜き、下っ端の騎士に指示する。
だが、困惑で剣を抜く思考には至らない。
というか移せない。
貴族に剣を向ける覚悟など、そうそうできない。
どうにかできる方法があるか、どうにもならない状況でもない限り。
「ダヴァン策は?」
「あるっちゃある」
「治安を乱したとして、お前たちを処断する」
団長は剣を三人に向ける。
「騎士に処断行為は認められてないはずだが?」
「な」
サラティスの耳に届いたのは聞いたことのない涼しげな凛とした声。
「動くな。動けば無力化する」
団長の首元には剣がきらめいている。
逆らえば、その皮から肉が、そして血液が挨拶をかわすことになる。
団長の背後には謎の男性が立っており、首元に剣を当てていた。
「遅ぇぞ」
「あのな、君と違って私は忙しいんだ」
「ダヴァン、あのイケメンさんと知り合いですか?」
澄んだ金髪に、凛々しさの中に確かな強さを感じさせる瞳。
「誰だてぇ……」
「騎士ならば剣を抜いた意味を理解してるだろ?」
イケメンは団長の首筋を撫でる。
厳密には滑らかな手刀を入れたであるが。
団長は目を開き、そのまま倒れこむ。
イケメンが優しく身体を受けとめる。
「ああ。サラティス様、あいつは味方だよ」
「君がダヴァンの主人か」
「正確には主人の娘だな」
「そうか、私はヨノス」
「私はサラティス・ルワーナ・リステッドです」
「……驚いた、君絶対教育に悪いだろ」
「ああ?誰が悪影響だと?」
ダヴァンの知り合いはダヴァンに悪態をつく人しかいないのだろうか。
「サラティス様、ハルティック。急いで宿に戻って移動準備を。ゼッカに戻るぞ」
「分かりました、ダヴァンは?」
「ここで野暮用だ」
「では、ダヴァン様の荷物も御持ちしますね」
「ああ、すまねぇが頼んだ」
「……ダヴァン。ゼッカに戻るってことは彼女の無実を証明できる証拠があるってことですよね?」
「ああ。だからこいつを呼んだ。安心してくれ」
「分かりました。……気を付けて」
「ああ」
サラティスとハルティックはそのまま、宿に向かった。