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第131話「会わせてほしい」

「ダヴァン、探しに行きましょう」

「そうだな」


 ハルティックも大人だ。

 夜遊びしたって何ら問題はない。

 がハルティックが夜遊びする姿は想像ができない。

 それに仕事を途中で放りだすようなことはしない。

 ならトラブルに巻き込まれた可能性が高い。

 すぐさま二人は周囲に聞き込みをした。


「落ち着け、サラティス様」


 サラティスは普段よりかなり早く歩いていた。


「もし、ハルティックが攫われたら……」

「いいか、サラティス様。気持ちは分かるが、こういう時こそ落ち着かないとな」

「はい……」


 しばらく聞き込みをすると騎士達に連れて行かれたという情報を聞くことができた。


「一旦宿に戻るぞ」

「どうしてですか?」


 誘拐じゃないことにひとまず安堵した。

 しかし、ここの騎士達は汚職をしている可能性がある。

 ハルティックを早く助けたい。


「まぁ、いいから」


 ダヴァンに言われて宿に一度戻ってから騎士達の駐留所に向かった。


「なぁ、昨日の夜黒髪の女性連れていったろ?」

「何だお前たちは」


 騎士は怪訝そうな顔をする。


「どうして連行した?」

「……お前には関係ないだろ」

「関係あるんだよな。連れだ。何もしてないのに連れて行ったのはどうしてだ?」

「はぁ?」


 騎士はバカにしたように笑う。


「殺人だ。最近領内で殺人が起きてな」

「俺たちはつい最近この領にきた。関所に問い合わせれば無実なのが分かるぜ」


 サラティスは大人しく黙っていた。

 交渉事には慣れていないからだ。


「あ?たまたま、黒髪赤目の魔人がそうそういるかっての。しつこいとお前らも捕まえるぞ」


 サラティスとダヴァンは思わず顔を見合わせる。

 魔人だと。

 つまりハルティックではないということか。

 それとも自分たちが知らないだけでハルティックは魔人であったのだろうか。


「ひとまず顔を見せてくれないか?」

「見せるわけないだろ」

「いいのか?」


 ダヴァンは威圧的に言葉をぶつける。

 騎士は心のどこかで一歩後退しのか、言葉に詰まる。 

 恐らく荒事には慣れていないのだろう。

 ダヴァンが凄めば子供なら泣きだし、気の弱い大人なら逃げ出す。


「このお方は貴族だぞ?もしかしたらお前らが捕まえたってのは使用人の可能性がある。貴族が確認したいと言っているのに、門前払いするんだな?」

「な、何?」


 貴族という言葉で騎士の顔は一変した。

 動揺に焦り。

 盗賊まがいの男だが言われてみれば、後にいる子供は確かに綺麗で身なりもそれなりに良い。平民でないのは分かる。

 つまり、この男は傭兵か護衛の類の可能性がある。


「ま、待て。聞いてくる」


 なら騎士の取る行動は一つ。

 上官に丸投げだ。

 暫くして別の騎士がやってきた。

 二人は部屋の中に案内された。

 部屋は犯罪者などを入れる牢屋ではなく、会議室のような感じである。


「まず、改めてお話を聞かせてもらっても?」


 先程の騎士とは違い、最低限の処世術は身に着けているようだ。

 ダヴァンは改めて事情を説明した。


「ではリステッド家であることを証明できるものは御持ちでしょうか?」

「これです」


 それはずっと肌身離さず持っている家紋入りの指輪。

 そして一枚の紙切れも添える。

 ここでサラティスは理解した。

 ダヴァンに言われ宿に戻った時に手紙をついでに荷物から持ってきたものだ。


「家紋入り……そして招待状……ですか」


 サラティスが出したのはシェリーから貰った招待状であった。


「ザバラット家が保証してくれるぜ。まさかとは思うが、騎士が隣さんの大貴族の家紋が分からないなんて言わないよな?」

「もちろんです、先程の部下の対応誠に申し訳ありませんでした」


 騎士は椅子から立ち上がり頭を下げる。


「それはいいです。では、女性に会わせてもらえますよね?」

「……」

「おい、何かやましいことでもあんのか?」

「……お二方はリステッド家のお方かもしれません。しかし、捕まえた女性は身元が不明です。貴族様に会わせるなど危険でできません」

「なら、俺がする」

「だめです」

「何故ですか?」

「あんたじゃ話にならんな。一番上と会わせてくれ」


 騎士は相手が貴族であろうと、違法行為をしているのなら捜査、逮捕できる。

 法的に認められているが、その権利を行使するのは人間である。

 職務中は騎士であってもプライべードではただの人である。

 人間関係も当然ある。

 綻ぶのは容易い。


「無理です。本日団長は不在で、私が実質責任者です」

「分かった。ならここの領主にザバラット家と王家からの連盟で抗議文出すからよろしく」

「な、何故王家が!」

「おいおい、騎士なのに周辺の政局理解できてないのか?」


 ダヴァンはこんこんと机の上を叩く。

 そう、それは上に開かれて置かれた手紙を暗に示す。


「ザバラット家とフィーナ王女様、リステッド家でお茶会したんだがな。その時一緒にいた使用人が理由も説明されずに拘束されてるんだぞ?」

「ぐ……」


 王家の誰かが来たことは知っていた。

 事前に通達があり、警戒を厳重に行ったからだ。

 しかし、そこにリステッド家がいたことは知らなかった。

 仮に三家から領主に抗議が行けば確実に責任問題になる。

 そしてそれは当然自分がけじめをつけさせられる。


「……せっ」


 騎士は叫ぼうとしたが、ダヴァンが思いっきり顔を掴む。


「お前は知ってそうだな」

「がっ」


 ダヴァンは思いっきり顔を引き寄せ、首元に手刀を落とす。

 騎士の体はがくんと思い切り跳ね、机の上にだらんと倒れこむ。


「ダヴァン、明確な犯罪になりますがいいんですか?」

「サラティス様、こいつは勢い余って転んで気絶したんだぜ?」

「……なるほど」

「恐らくこいつは仲間の騎士を呼ぼうとした」

「それは普通なのでは?」

「いや、恐らくだが俺たちを貴族を騙る不審者として拘束しようとした」

「でもそんなバレることします?」


 短絡的で愚かな行為を騎士がするのだろうか。


「ああ。たぶんだが、こいつはやましいこと知っている立場なんだろう。貴族とはいえ子供と護衛一人。普段から隠蔽していれば、またすればいいやと手が出てもおかしくはない」

「嫌な想像が現実味を帯びてきましたね」

「ああ。ひとまず牢に行くか」

「場所知ってるんですか?」

「大抵は地下にあるんだ」


 二人は地下へと向かう。

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