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第13話「四歳になり」

 時折このような変わったこともあったが基本的にはあまり変りのない時間が過ぎ、サラティスが四歳の誕生日を盛大に祝われ少し過ぎた後、リステッド家に大きなニュースが齎された。


「おかああさま、おめでとうございます」

「ふふふ、ありがとう。サラティスもこれでお姉ちゃんになるのよー」

「母さん、妹ですか?弟ですか?」

「それは生まれるまでのお楽しみよ」


 アレシアの懐妊のニュースだ。

 そして少し寂しいニュースとしてジェリドが来年、学園に入学することが決まった。


「ジェリド様、サラティス様おめでとうございます」


 教師のデルムは教室に入るなりまずは祝辞を述べた。

 最初はサラティスの勉学にジェリドが付き添い。復習のいい機会にもなるで始まったものだが、いつしか授業の内容はより深くなり、ジェリドすら追いつくのが難しい、サラティスに教えてもらうまでになっていた。

 ジェリドの知識としては学園の初年度でつまづくことがないレベルなのでジェリドが勉強を疎かにしているというわけでない。

 あまり、教え過ぎるはよくないのでここ最近はサラティスやジェリドが疑問に思ったことなど解説するといった授業内容に変りつつあった。

 サラティスは文字、計算能力、魔術の知識は前世の記憶というアドバンテージがある。

 しかし、死後から今に至るまでの歴史、法律、社会常識などは肉体と同じレベルであったため、そういった物を取り込めるようデルムに教わってきた。

 サラティスも学園に通うようになった時決して困ることはない知識量になっていた。


「そうだ、おにいさまはらいねん、がくえんにかようことになりました」


 誰も指摘、疑問にすら思わなかったがサラティスの活舌が変りつつあった。

 セクド、アレシアとしては学園に通うまでに初対面の相手でも疑問に思われれない活舌であれば問題ない、成長すれば変わるだろうという方針だったので特に何かするわけでもなかった。

 サラティスの活舌が同い年のケイトと比べて幼かったのは理由があった。

 隠れて使用していた、身体強化魔術のせいだった。

 強化とはいえ、限度がある。肉体に負担が出るものだし限度を越えると肉体が壊れる。

 三歳の幼い幼女の体に影響が出ないレベル使用していた。

 腕、足など筋肉を鍛えればより魔術のレベルを上げることができる。

 健康的な生活を送り運動量が多ければ自然に鍛えることはできる。

 ただ、舌に関しては筋肉のように鍛えられるものではない。

 魔術の副作用で少し幼くなっていたのであった。

 身体の成長により、舌が魔術に負けないようになり自然と喋り方が変っていったのであった。


「ふふ、ジェリド様、いいですか?今のジェリド様の学力ならば学園に行っても上位の成績を収められるでしょう。しかし、そこで慢心すれば二年、三年になった時途端に堕ち授業についていくことすらできない、なんてことになりかねません。剣の訓練と同様常日頃怠るべからず、いいですね?」

「わかってます」


 ジェリドはもはやサラティスの方が学力が上であってもプライドは傷つかない。

 サラティスが天才なのであろうと理解しているし、普段たくさんの本を読んで、先生達に質問して積極的に知識を吸収しているのを知っている。

 そこに嫉妬などなくただただ尊敬しているし妹が誇らしい。

 ただ、サボって馬鹿になり妹に飽きられてたり、軽蔑される。なんてことだけは耐えられない。

 まさしくセクドの息子であった。


「なら、学園についてお話しましょうか」

「おねがいします」


 サラティスは学園という教育機関が国により作られ、子供が勉強できるようになっている。

 ことは知っている。が、それ以上の知識はない。


「まず、学園というものについてですね。学園とは子供が学力、常識、社会性を身に着けるための機関ですね。国内には二つの種類の学園が存在します。ジェリド様、二種類について説明をお願いできますか?」

「もちろんです。一つ目は国が王都に作った学園。二つ目は領主が自身の領地内に作った学園です」

「完璧な説明ありがとうございます。リステッド領にも一つございますね。領地にある学校は庶民の領民が通うため、王都のは貴族など身分が高い子供が通っています」


 当然二人とも王都の学園に通うことになる。


「王都の学園について説明しますね。王都の学園は二つあります。お二人が通う予定のカレイディア学園は国民のみ通うことが許されています」


 もう一つはティルガダック学園。こちらは他国の人間でも通うことができる。

 国の高官や外交などに関連する仕事を目指す子供、外国とコネクションを持たせたいと考える親がこちらの学園に通わせる。


「学園は最短で三年、平均して五、六年、最長で十年で卒業となります」

「なんで、そんなにばらつきあがあるのですか?」

「学びたいこと、才能と努力によって変わる感じですね」


 三年で卒業する生徒は貴族の中でも爵位が低い者、領地持っている貴族の第二子以降で領主を継がない者が多い。

 長男は家を継ぐが、それ以外は何か仕事に従事しなければならない。

 しかし、貴族の子供でありどこかの街で庶民と同じように暮らすのは少し厳しい。

 中にはそういった道を選択する生徒もいるが、大多数は自分の家と関連する場所で働くことが多い。

 例えば、騎士は人気である。騎士は戦争時には他国と先陣を切って戦う必要がある。

 しかし、今は平和な世なので国内、領地内の治安維持が仕事だ。

 犯罪捜査、逮捕などだ。


「なるほど。そのきしがわるいことしたらどうなりますか?」


 騎士という権力があり、身分が貴族ならそれを裁くことはできるのか。


「はい、騎士にも二種類あって王都で国に仕える騎士、領地において領主に仕える騎士があります。国の騎士は、他の犯罪を犯した騎士を捕まえるのも仕事になりますね」

「なるほど……」 


 組織は人数、時間で必ず善悪入り乱れるのを知っている。


「一番多いのは五年で卒業ですね。当面のジェリド様の目標は五年で卒業ですね」

「先生、質問いいですか?」

「どうぞ」

「五年で卒業できなかった場合は?」

「六年目で卒業すればいいのです。成績や素行不良で卒業できなかったらお叱りを受けると思いますが、やりたいことがあって六年になったなら、恥ずべきことはないですね」

「なるほど……」

「六年以降の卒業は主に魔術師になりたい生徒に多いです。学ぶことが多いですし、学園に残って施設をや道具を利用したいなど理由からあえて卒業を遅らせていますね」

「じゅうねんすぎたら、どうなるんですか?」

「卒業できる成績であれば強制的に卒業、足りておらず、卒業試験も落ちた場合は退学ですね」


 つまりは最長で十年しか在籍できないということだ。


「サラティス様は魔術の才能がおありとのことで、恐らくはジェリド様よりは長く在籍されるのかなとは思います」


 ジェリドはセクドの跡継ぎとして学ぶことはたくさんある。


「あ」


 サラティスはふとっ重要な、貴族として生まれたので考えから抜け落ちてたあることに気づいた。


「おかねはどうするんですか?」

「これはどう過ごされるかで、変ってきますが大体学園に一年通うのに三百万フィルから、一千万フィル必要になります」


 サラティスは珍しく呆けた顔をした。

 忘れていたが、かなりの大金である。

 これも過去デルムに習ったことだが、王都の一般的な庶民の平均的な一年の稼ぎは三百万フィルだそうだ。

 つまり、一年間頑張って働いたお金が全て学園生活で消えるのだ。そう考えると大金だが、貴族からすれば安いのかもしれない。


「セクド様や、アレシア様と同様に過ごされるのであれば三百万フィルくらいで済むはずですね」

「じゃ、どうして一せんまんもかかるばあいがあるんですか?」

「ジェリド様、お答えできますか?」

「もちろん、それは父さんから聞いてます」


 デルムに振られ、父から教わったことを口に出す。


「まずリステッド家は特殊だ。普通よその貴族では護衛がいて、毒見もいる。学園には爵位に応じて連れていける使用人の数に上限があるんだ。うちは護衛も毒見も要らないからお金はかからないけど、普通はそういった費用もかかるってことだ」

「それは本当に各貴族の当主様の思想によりけりですね」


 上限まで使用人を連れていく貴族もいれば、子供のみで使用人は連れて行かない貴族もいる。

 連れていくお金は十分にあってもだ。

 リステッド家に毒見役はいないが、護衛はいる。もっぱら護衛ではなく警備としての役割として働いているが。

 セクドには護衛が不要である。基本的には護衛よりセクドの方が強いからである。

 護衛が必要なのはセクドが家を離れる場面である。なので護衛は必要な存在ではある。

 デルムは最後に二人に、貴族とは領地のお金を自由に使えるが全て自分のために使えると誤解してはいけないと教えた。

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