第128話「鉱山へ」
翌朝、サラティスが目覚めると既にダヴァンは戻っていた。
「とりあず明日の朝、鉱山の見学していいってよ」
「ありがとうございます。一体どうやったんですか?」
「それは企業秘密だな」
「ダヴァン様、合法ですよね?」
「ハルティック、それは俺が非合法なことやりそうってことかい?」
「……」
これはダヴァンには申し訳ないがハルティックは悪くないように思う。
「ダヴァン、ハルティックをいじめるのは止めてください。悪気があるわけじゃないんですよ?」
「知ってるよ。同僚なんだから。悪いなハルティック、まだ酒が抜けてねぇみたいだ」
「ダヴァン様、胃薬買ってきましょうか?」
「あー、それは大丈夫だ。ひとまず俺は寝ようかと思うがサラティス様予定は?」
「部屋に籠って魔術の特訓でもしようかと」
「そうか。何かあれば直ぐ叩き起こしてくれ。ハルティック、しっかり頼んだぜ」
「かしこまりました」
「ちょっと、大人しく特訓するだけですよ?」
「サラティス様だから問題はないと思うけど魔術だろ?」
魔術は一つ間違えば大事故に繋がる。
サラティスの魔術の腕を知っているから大丈夫なのは理解しているが、やらかし常習犯でもある。
家ならともかく、宿なのだ。万が一迷惑をかけるようでは困る。
「大丈夫です。光魔術を弄るだけなので」
「そうかい」
ダヴァンは欠伸をしながら部屋を出て行った。
翌朝、いつもより朝早くサラティスは起きた。
いつも履いているスカートではなくパンツを履き、長い髪も縛る。
三人は鉱山の入口手前にある小屋に来ていた。
外では鉱員たちが朝会を開いてるそうだ。
朝会では仕事上での連絡事項を共有したり、道具などの安全確認を行うそうだ。
暫くして三人は鉱山の中を案内された。
「ここがメインの通路だ。ここから各掘削地点に向かう」
鉱員の説明を受けなら後に続く。
鉱山はサラティスが知ってい頃からそんなに変わっていない様子だった。
「あれ?これより先がありますよね?」
最後だと説明された地点は鉱山の最奥ではなかった。
「ここから先は一番危険で一般人は連れてけない」
「そうですか。因みに作業されている方は?」
「知らん。奴隷達ってことだけだな」
「奴隷ですか。そんなにたくさんいるんですか?」
「そうでもないな。この間事故が起きたがそん時に減って、補充待ちだ」
「事故!お兄さん達は大丈夫だったんですか?」
「ああ。崩れたのは奴隷達が作業している区画だからな。俺たちは皆無事だ」
鉱員の話や、奴隷を語る態度から鉱員たちは奴隷を余り快く思ってなさそうであった。
同じ鉱山で働く仲間であるのに、明確に線引きをしている。
法に基づいて奴隷になった中に違法な手段で奴隷になった者が混じっているのだろう。
そしてこのことを知らないため、全員が厄介者であると思っている。
案内してくれる鉱員は面倒臭そうでそっけない対応だったがサラティスの質問に答えるうちに少しだけ、態度が軟化してきた。
後で周囲を警戒している二人は改めて圧倒されていた。
人たらし。
子供だから警戒されにくいというのはあるだろうがその打ち解け具合はすさまじい。
『ドン』
案内が終わり入口に辿り着いたところで、何やら大きな音と共に地面が振動した。
「サラティス様」
ハルティックに手を引かれ小屋まで戻る。
「どっか崩れたって感じだな」
「感謝ですね」
サラティスは実に鉱員は立派だと思った。
こういった事故の危険と隣合わせになりながらも仕事をしてくれるおかげで、自分たちは金属を好きに使えるのだから。
「そうだな。食い物はもちろんだが、金属がなくなったりでもしたら大騒ぎだろな」
包丁も、鍋もなくなったとしたら一体どうやって料理を作ればいいか。