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第125話「日常は突然に足を踏み外し」

 女性は涙を零す。


「大丈夫です。私達は貴女を襲ったりしません。まずは話を聞かせてくれますか?」


 女性は暫く涙を流した。

 ようやく落ち着いたのか女性は話し始めた。


「私はディスィリシアといいます」

「貴女は魔人ですかね?」

「……はい」

「安心してください、私は魔族の友達もたくさんいます」


 ディスィリシアはタイメイのレンカという村で生活していた。

 血の繋がった両親は不明で、赤子の頃拾われて、優しい夫婦の元で育てられた。

 育て親の二人は五年前に病で亡くなってからは一人で生活していた。

 仕事は布を加工する仕事をしていた。

 そうただ、普通に暮らしていた。

 村で差別されることもなく、問題を起こすことなく静かに暮らしていた。

 だが、半年程前に一変した。

 仕事を終え、家に帰る途中であった。

 その日は同僚が病気で休んだため、少しだけ帰るのが遅かった。

 暗い夜道を歩く。

 いつも通り家に着く。

 はずだった。

 ディスィリシアは目を覚ました。 

 家に着いた記憶が無かった。

 何より、目に飛び込んできたのは見慣れた天井ではなかった。

 起き上がろうにも体が動かなかった。

 両腕、両足、胴体を紐か何かで縛られていた。


「んんん!」


 口も布か何かで覆われ喋ることもできない。


「起きたぞ、早くしろ」


 男の声がした。


「んんんん」


 声の主とは別の男が何やら魔術を使ったのが見えた。

 右足を縛っている紐が切れ男を蹴ったのは覚えている。

 暴れに暴れたが体が痛みまた、気を失った。

 気付くとまた別の場所にいた。

 それから地獄であった。

 ディスィリシアは鉱山にいた。

 何も悪いことしていないのに、奴隷になっていた。

 何を言っても信じてもらえず、逆らえば魔術で体が裂けるような痛みが襲った。

 逃げ出そうとしたが、一定以上離れると痛みに襲われ、逃げることもできなかった。

 食事も一日一回。

 次第に生きる気力がなくなり、今が現実か夢か分からなくなっていった。

 そして、夜が近くなると空腹のあまり寝るのではなく、気を失うようになった。

 ある時事故が起きた。

 岩に押しつぶされて、自分と同じように強制労働していた奴隷が何人も死んだ。

 だが、魔人の体のお陰か何とか生き延びることができた。

 そして、逃げ出しても体に痛みが生じなかった。

 きっと事故で死んだと思っているのだろう。

 ディスィリシアのひそりと逃亡生活が始まった。

 痛みは出ないが夜になると記憶がなくなるようになった。

 朝起きた時、記憶の最後にあった場所ではない場所にいたりしたので、夜出歩いていることが分かった。

 時に怪我をしていたり、自分が何をしているのか分からなくて怖くなった。

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