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第123話「どれい」

 ダヴァンは再度襲撃のあった部屋に戻ってきた。


「あんたらもご苦労さんだな、こんな夜に」

「ああ。だが、これが私たちの職務だからな」

「立派なことで。俺とお嬢様達は別部屋を借りててな、そっちが俺の部屋だ。で、下が騒がしいのに気付いて、俺はお嬢様の部屋に行って安全を確かめた」

「なるほど」

「暫くしたら、扉ぶち破って誰かが襲ってきた」

「どんな人物だったのだ?」

「悪い、ご覧の通り暗いだろ?それに、相手は頭に布被せてたんで顔は見てねぇ。ただ、身長は少し俺より小さく、小柄のに見えた。武器は持ってなさそうだったから、魔術で攻撃してきたと思う」


 騎士達は真剣にダヴァンの発言を記録していく。


「詠唱を聞いた訳じゃねぇから推測になるが、風魔術で攻撃してきたんだと思う。三回ほど攻撃を防いだら諦めたのか、逃げていった」

「追わなかったのか?」

「ああ。俺は護衛だからな。それに優秀な騎士が直ぐに駆けつけたんだ。俺が追う必要ねぇだろ」

「……分かった。協力助かる」

「これで終わりかい?」

「ああ。因みに今後の予定は?」

「安心しな。この件で俺の雇い主が一切あんたらに言うことはないぜ」

「……」

「もういいかい?」

「ああ、行っていいぞ」


 ダヴァンと別れた直後、サラティスはハルティックに外に声が聞こえない音量で質問した。


「どれいとはなんですか?」

「……授業では一切聞かなかったのでしょうか?」

「はい」

「……本来でしたら、きちんと教師から習って欲しいのですが……あくまでこれは、私の主観も混じるのでご留意ください」

「はい」


 奴隷制度。

 一般的には王族、貴族、平民のように身分がありその中の身分として奴隷と呼ぶ。

 奴隷身分は著しく自由が制限される。

 労働を強制されたり、身柄を売買される。

 その身分を奴隷という。

 サグリナ王国には身分としての奴隷制度は認められていない。

 他国の制度などはサラティスにはまだ教えていなかった。

 身分としての奴隷は存在しないが、サグリナ王国には奴隷が存在する。

 一つ目は他国の人間が奴隷を連れてサグリナ王国に入国した場合。

 二つ目はサグリナ王国で裁判の判決結果により一時的に奴隷として扱われる。

 基本的に国内で目にする機会があるとすれば後者であろう。

 判決で奴隷になるとはどういったことか。

 犯罪者への刑罰の一種で強制労働がある。

 この刑罰が執行中のことを奴隷と呼ぶ。

 刑罰が終了すれば終わるので、他国の身分としての奴隷とは異なるのだ。


「なるほど。強制労働で自由が制限されるから奴隷と呼ぶのですか」

「そうですね。その制約として契約魔術の一種を首につけるそうです」

「……これがそうですかね?」

「申し訳ありません。詳しくは知らないため、これがそうかは判断できません」

「……」

「気分を悪くされましたか?」 


 刑罰だ、身分だ、自由だ。

 子供には少々難しい話である。

 だが、サラティスには理解できると思ってた。

 当然理解できたら思うところがあるだろう。

 奴隷制度は大人ですら賛否両論ある制度なのだ。

 多感な年頃で、ショッキングな話題で心身に影響を及ぼすことだってあるかもしれない。

「いえ、ただサグリナ王国はよく奴隷制度を廃止したなって」


 ネイシャ時代、奴隷ではなく、私役という身分があった。

 中身は奴隷と同じである。

 私役は捕まった犯罪者か、敵国、敵領の人間がなっていた。

 私役は非常に利便性があった。

 安価な労働力であるし、それだけではない。

 戦場では気にせず肉壁に使うことができた。


「はぁ……」


 ハルティックは首をかしげるが、サラティスの独特な視点はいつものことである。


「つまり、他国の人と一緒に来て、その人から逃げ出した訳じゃなければ……」

「はい。彼女は何かしらの罪を犯したかと」

「……魔人だからとかありますか?」

「そのような理不尽な話は聞いたことはないですね……」


 その瞳には軽蔑にも似た怒りが浮かんでいた。

 仮に、魔人だから無理やり奴隷にしているのを知ったら、サラティスも非難するだろう。


「因みに、奴隷を勝手に助けたりしたら罪になりますか?」

「なりますね。奴隷でなくても、牢屋にいる犯人を逃がしたらダメと同じですね」

「……うーん」


 サラティスは頭を悩ます。

 もし彼女が罪を犯し、服役中に逃走したのなら速やかに騎士に身柄を渡すべきだ。

 そして思考は扉がノックされ中断した。


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