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第114話「直接」

 事の始まりは一ヶ月程前。

 この村に泊まっていた商人が盗難の被害にあった。

 盗まれたものは鉄製の土工用具。

 鉱山で作業する鉱員に道具を届ける最中であった。

 そして暫くして、村人が一人殺された。

 それは夜中のことであった。

 その村人の家は夫婦で暮らしていた。

 旦那は五十代。元鉱員でがっちりとした筋肉質な体。

 作業中に怪我を負い、一年程前に鉱員を引退したそうだ。

 その屈強な体が真っ二つに裂けていた。

 その時妻も家にいたが、旦那が命を賭し逃がしたので無事であった。

 妻は涙ながら当時の状況を語った。

 夜中に物音がして、二人は目を覚ました。

 護身用の剣を持ち、音の正体を暴くと、そこには黒髪赤目の十代か二十代前半の若い女性がいた。

 黒いろのぼろぼろなワンピースのような、ボロ布を纏っているような服装であった。

 食材を盗み食っていた。

 様相から飢餓で盗みに入ったのかと判断した。

 旦那は見逃してやるから今すぐ出てけ、出てかないなら捕らえると剣を向けた。

 女性はよろよろと、覚束ない足取りで旦那の方に向かった。

 次の瞬間である。

 女性が腕を振るった。

 腕が切れるかと思いきや、剣が綺麗に切断された。

 旦那は逃げろと叫び、妻は家を出た。

 戻ってくると二つに裂けた旦那の体。

 そして、黒髪赤目の不審な女性は目撃され、盗みが四件、殺人が二件発生した。

 遺体や現場の調査から、恐らくこの女性は魔人であろうだろと判断された。


「では、この中に直接見た方はいるのですか?本当に犯人と同一人物ですか?」


 サラティスの怒気も時間と内容が軟化させていた。


「「……」」

「いないようですね。なら、行きましょう」

「へ?」


 村人達は困惑した。

 村人達も少し冷静になり、次第に事の重大さに震えていた。

 身なりや所作からやはり、貴族のお方だろうと思う。

 つまり、石を投げた者、剣を向けた者は死罪になってもおかしくはない。

 処罰を求める声ではなかったことに驚いた。


「き、貴族様がいらっさしゃるようなところでは……」

「公式の場ではないので気にしないでください」


 貴族の要望に逆らうのも今この状況ではできない。

 サラティス達は村人最初の被害者の所へ向かった。


「どちら様でしょうか?」

「私はサラティス・ルワーナ・リステッドです。少々不躾で申し訳ないのですが、貴女が目撃した女性はこちらの女性ですか?」


 後ろに控えていたハルティックを女性に確認させる。


「……いいえ、もう少し体つきも細く、背も小さかったかと……一体貴族様が何の御用でしょうか?」


 サラティスは経緯を説明した。


「皆さん、人違いだったのははっきりしたのでハルティックに謝ってください」


 村人たちは謝罪と許しを乞う声をあげた。


「では、皆さんこの村で一番美味しいお店を紹介してください。それで許します。ハルティックは何かありますか?」

「……いいえ。少し切っただけですし」


 それに傷ももうない。

 サラティスは紹介された店で食事を澄ませ、翌朝村を出て行った。


「いいのか?」

「何がです?」

「てっきり俺は犯人を探しましょう!なんて言うんじゃないかと思ってたけどな」

「止めるでしょう?」

「そりゃな」

「これがリステッド領なら考えますが、ここは違います。さすがに余計なことはしないですよ」

 恐らくだが、当然騎士達が犯人の行方を追っているだろう。

 それを邪魔するのはよくないことだ。

 何か知っているのなら別であるが、現状何も知らないしむしろ邪魔してしまうことになるだろう。

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