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第110話「なんといいますか」

 浴槽から出て着替えのための部屋でサラティスは髪を乾かす。

 シェリーは生まれたままの綺麗な姿のまま棒立ちでサラティスを見ている。


「シェリー先生?」


 フィーナは不自然さに声をかける。

 サラティスは髪を乾かすのに集中していて気付いていない。

 暫くしてサラティスは異変に気づき後ろを向く。


「サラティス、それは何よ」

「へ?」


 何か無作法をしただろうか。


「その魔術なに?普通の風じゃないわよね」


 シェリーは思わずサラティスの髪を触る。


「は?熱い?……熱風?火使ってないみたいだけど、原理は?」

「え?サラって回復魔術以外も無詠唱で使えるの?」

「「あ」」 


 これは二人とも予想外であった。

 サラティスは髪を乾かす魔術は日常動作となり完全に忘れていた。

 シェリーも二人の仲から、魔術に関しては回復魔術以外のことも知っているものだと思っていた。


「なんといいますか……」

「フィーナ様。込み合った話になりますのでそれは、後ほどゆっくり話しましょう。それより、サラティス、それは何の魔術よ?」

「風邪引くので、この話も後にしませんか?」


 三人とも艶やかな素である。

 全裸で長時間話すのはどうなのだろうか。


「そ、そうですね」


 シェリーはそこで冷静さを取り戻した。最もすぎた。


「サラ、私のもやってちょうだい」

「分かりました」


 結局サラティスは二人の髪を魔術で乾かした。

 服を着て、フィーナが寝る予定の寝室に向かった。


「まずはフィーナ様。サラティスの魔術についてですが、こちらは他言無用をお願いできますでしょうか?」

「もちろんよ。友達の秘密を喋るなんて淑女のすることじゃないわ」


 サラティスが回復魔術以外の魔術も一通りは無詠唱できる腕であることを伝えた。

 そしてそれは自分の教え方ではなく、ただサラティスが才能が優れているからと念を押した。

 程度や見ただけで使えてしまっていることは伏せておいた。

 そしてシェリーはサラティスに主導を渡した。


「これは髪を乾かす魔術です。髪だけじゃなくて、濡れて服などにも使えるので便利です」


 森の中でのサバイバル生活で本当に役に立った。


「風魔術と光魔術を組み合わせたものですね」

「魔術って作れるの?」


 魔術を習いたての子供ができるはずもない、と言いたい所だが出来てしまっているのだ。

 だが、教師として残酷だが伝えなくてはいけない。


「フィーナ様、普通はまず無理です。恐らくサラティスだがらできたことで、王国広しといえど他の子供はまず絶対にできないです」

「シェリー先生とどっちがすごいの?」

「もちろんシェリーさんですよ」

「あのね……」


 サラティスはまだ新しい魔術を全て学んではいない。


「フィーナ様、私など比べることさえ敵わない程サラティスは天才です」

「そんなになの?」


 フィーナの尊敬する眼差しが眩しい。


「サラティス、それ魔術具にしなさいよ。それ、草刈り機より確実に売れるわ。というか、ここ近年で一番売れる魔術具になるわよ」


 一家に、一人一台あっても無駄にならない魔術具になるだろう。

 魔術師視点などではなく、ただの女性としてまず欲しい。

 あったら絶対買う。

 そう思うのだから絶対売れる。


「待ってちょうだい。草刈りってあの庭の草を切ってくれる魔術具よね?」

「はい」

「あれ作ったのサラなの?」


 王宮でも大量に購入した。

 庭の掃除が楽になったと使用人たちが喜んでいたのを聞いた。


「作ったていっても魔術式考えただけで、ほとんど職人の方がやってくれたんですよ」

「フィーナ様、サラティスの事は聞いてはだめです」

「ひどいです」

「あのね、あんたからすれば大したことなくても他の人間からすれば、大したことなのよ」

「シェリー先生、私も勉強続ければいつか、魔術式を作ることはできますか?」

「……分かりません。そればかりは努力と才能、運や環境も絡んでくるので」

「そう。サラはどうやって作ってるの?」

「そうですね。普段こんなのがあれば便利なのになーと思ったことをどうすればいいかなーと考えてます」

「サラティス、わざわざ光魔術を選んだ訳は?乾かすなら火でしょ普通」

「火は危ないじゃないですか。だから光魔術から熱だけとってみました」

「光魔術って熱いの?」 


 フィーナにはさっぱりな話だ。


「ああそうですね。フィーナ様、普段私たちが使ってる魔光灯は触っても熱くならないように作られているのです」


 サラティスは机を触って火傷して知った。


「なので、光魔術の熱で風を温めて乾かす感じですね」

「絶対魔術具にしなさいよ」

「えー、怖くないですか?」

「何がよ?」

「だって万が一事故が起きて火傷したら大変ですよ?」

「あのね、なら草刈り機だって手足斬れる可能性あるわよ?」

「あれは、人に向けないじゃないですか。でも、これは頭にやるんですよ?」


 女性貴族にとって顔に傷ができることは、あまり良いことではない。


「その危険性を想像できるのだから、大丈夫よ。それを解決するのがあいつの仕事なんだから」


 シェリーは温かい眼差しを向ける。


「二人ともいいですか?どんな小さな魔術でも使い方次第では人を傷つけることができます。どんなに魔術が精細に使えるようになってもこれだけは忘れないでくださいね」

「「はい」」


 それから暫く魔術談義が交わされた。

 そして、寝る時間になりシェリーは部屋を出て行った。

 サラティスとフィーナはもう機会がないかもしれないので一緒に寝ることにした。

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