第104話「六歳、そして出発」
アレシア協力の元、孤児院の改革も進みだした。
レザクターによるとユリスも張り切って頑張っているそうだ。
そして、無事に六歳の誕生日を迎えた。
フィーナとの手紙のやり取りもずっと続いていた。
フィーナは一年かけて、詠唱のみで回復魔術が使えるようになったそうだ。
シェリーからも手紙が届いており、それは招待状であった。
日付まで指定されていた。
旅の予定を変更することにした。
まずザバラット領にまっすぐ向かい、北上する形でリステッドへ戻ってくるルートだ。
「いいかい、サラティス。ハルティック、ダヴァンの言うことを絶対守るんだよ。騒ぎや騒動が起きても近づかないように」
「ハルティック、寝坊、暴飲暴食させないようにお願いね。いい?ダヴァンの真似しちゃだめよ」
「おい、アレシア様そりゃ酷くないか?」
「ダヴァン。あくまで付き合って貰うから旅先でハメを外すことに口出しするつもりはありません。でも、深酒や酔ってサラティスに酒をなんては止めてくださいね」
「さすがに酔っても子供に酒をすすめることなんざー……」
「ジェリドに前にやりましたよね」
サラティスは初耳である。
ダヴァンはしゃきっと背筋を伸ばす。
「アレシア様私が傍にいるのでご安心ください」
ダヴァンは口を挟まず静かにしていた。
セクドとアイコンタクトで何か意思疎通をしていたようだ。
皆に見送られ三人は出発した。
サラティスはハルティックが乗るホンスに乗っている。
ハルティックの腕の間に挟まる形だ。
ダヴァンは三人の荷物と一緒だ。
サラティスは感動した。
今まで獣牽車で移動しか体験していなかった。
ホンスに乗った時の振動。
尻に伝わる生命の躍動。
風が頬を、髪を撫でる。
太陽の光が頭を肌を照らす。
獣牽車では味わえない。
ダヴァンの心配とは裏腹に、予定通り何も起きることなく、ザバラットに到着した。
魔獣騒動に巻き込まれることもなく。
盗賊などの犯罪者や柄の悪い輩に絡まれることもなかった。
「止まれ」
ナンタルダートを南下する形でザバラットに入る。
関所で騎士達に止められた
普段の様子を知らないが、今まで通過してきた関所で一番厳重であった。
周囲を警備する騎士の数も多いし、すごい緊張感があるように感じた。
指示に従わない者は斬捨てる。そんな気迫さえ感じる。
サラティスはシェリーからの招待状を渡した。
騎士は受け取ると、すぐさま別の騎士達を呼び複数人で確認しだす。
「サラティス様と御付きの方ですね。リステッドからの長距離移動御苦労様です」
本物だと確認できたら、態度が軟化した。
事前に、旅のこと獣牽車ではなくホンスで行くことを手紙に書いておいた。
それがきちんと伝わっていたのだろう。
「皆さん、怖い顔してますが何かあったんですか?」
「サラティス様。すみませんが、シェリー様にお聞きください」
「分かりました、お仕事頑張ってください」
嫌な感じはしない。真面目さを感じる。
「ここがザバラット」
目の前に広がるのは広大な農地。
ザバラットではフダワとタキヌの生産が盛んである。
タキヌはフダワと並び主要穀物の一つである。
タキヌは水田で育てられる穀物である。
フダワは基本的には加工して使うが、タキヌはできた果実をそのまま食べる。
実った果実から外皮を取り除き、それを炊いたりして食べる。
リステッドではタキヌを育てている。
フダワは気温のせいか生育が悪いのである。
だが、量が圧倒的である。
畑、水田地帯を抜けると街が見えてきた。
「どこもかしも道が広いですね」
水田地帯は細い道、舗装されていない土の道が多かったが主要の道は広い。
獣牽車が四台は通れるくらいに広いのだ。
「サラティス様、収穫した穀物を移動させるのに、道広くしてんだ」
「なるほど」
「収穫時期は台車の往来ですごいらしいぜ」
つまり、それだけ豊である証拠である。
作品へのブックマーク、評価等誠にありがとうございます。
宜しければまだしてないという方はブクマ、評価是非お願い致します。
前話で五歳編が終わり、六歳になりました。
屋敷の中、領内の中から少しずつ外の世界へと。
これからもお付き合いしていただけますと幸いです。