1話
日本が「ものづくりの国」「世界の製造大国」「高品質の大国」という潮流から外れつつあった時勢。
リーマンショック、東日本大震災が大きな変革点となり、日本は大きな過渡期を迎えていた。
そんな日本の屋台骨は自動車産業である。
日本は自動車産業を屋台骨に様々な産業が展開されていた。
自動部品を生産する産業機械、工場プラントの資材、それらを搬送する輸送業や人材を確保する人材派遣業。それらに介在する商社や卸売業、金融機関、飲食レジャー産業。
自動車以外の産業はどうだろうか?
半導体産業は東北を中心とした生産拠点の展開を行っていたため、東日本大震災の被害を色濃く受けた。
日本の主力産業であった造船産業、製鉄産業、家電産業は韓国・中国にシェアを奪われた。
更には、原発事故の影響もあり食文化にも風評被害という大きな打撃を被った。
そんな時代の日本ーーー
河村たかしの市政の下、名古屋市内各所で様々な再開発事業が行われていた。
駅裏と呼ばれた名駅西側の再開発。
名駅前の再整備。
金山地区のレジャー施設建設。
数々の都市開発が行われていった。
ゼロ年代の終わり頃、███大学は重い腰を上げて、キャンパスを名古屋市内に移転させた。
なぜキャンパスを移転させたのかは諸説ある。
校舎の老朽化が原因だったのか、はたまた羽振りが良かったのか、それは分からない。
名古屋市内の一等地にキャンパスを設けた為、ビルが二棟聳え立つだけの殺風景な見た目である。
キャンパスを移転して、数ヶ月も経過しないうちに『とある噂』が流れた。
『学長が資産運用に失敗し、数百億の損失を出した』
歴代X大学では経済学部の学部長経験者が学長を行なっている。
『餅は餅屋』に、『資産運用は経済学者』に、そんな理屈からこのような形をとっている。
そうした状況、風説、組織体制が原因で大学側と学生側の溝が深まっていたのである。




