第94話 キースの作戦
アルトと一角黒豹との距離が空いた瞬間、間にキースが割って入った。
「キース!?」
「アルト、こっちへ。」
その隙にレシェンタがアルトの服をちょいちょいと引っ張り、少し離れた所へ誘導する。
「で、でも、あのままじゃキースが…」
「任せて大丈夫よ。エメラとコハクがついてるから。」
レシェンタが指した方向へとアルトが目を向けると、少し離れたところにエメラたちがいた。それぞれ風と土の魔法で、キースを助けたり一角黒豹を足止めしたりしているようだ。
それを見て安心したアルトは、レシェンタに向き直る。
「わかったよ。それで、どうしたの?」
「あのね、アルトが気づいたあれ――一角黒豹の後ろ脚の、飾りみたいなもの。あれを壊すことにしたの。」
「えっ?」
「あの一角黒豹、魔法か何かで操られているみたいなの。それで、まずは一番疑わしいあの飾りを壊そうってことになったのよ。」
「えぇっ!?」
驚くアルトを落ち着かせ、先ほど皆とした話を掻い摘んで説明するレシェンタ。
「万が一攻撃が外れて一角黒豹に当たっても、多少の怪我なら私が治せるわ。テナには悪いけれど、他に手がないのよ。あの一角黒豹も苦しんでいるみたいだし、何かに操られているのなら、早く解放してあげたいの。」
レシェンタの真剣な眼差しに、ゴクリと息を呑むアルトと、神妙にしているテナ。
「……わかった。テナも、いい?」
「にゃあ。」
「わかってくれてありがとう。」
アルトとテナの返答に、ほっと胸をなでおろすレシェンタ。
「それで、キースが立てた作戦なんだけど―――」
◇
「お待たせ、キース!」
「よぉ、アルト。レシェンタから話は聞いたな?」
「うん。」
「よし、んじゃいくぜ…っ!」
キースの作戦、その第一段階は――
「――いくらAランクの魔獣でも、体力も魔力も無尽蔵じゃない。まずは、詠唱なしで魔法が使えるアルトと直接攻撃の俺とで連携して、一角黒豹を疲れさせる。レシェンタたちはなるだけ力を温存しておいてくれ。でも、ヤバい時はサポート頼むぜ。」
実際、魔法を連発していてレシェンタはそこそこ消耗していた。コハクも表情にこそ見せないが、久々に戦って疲れが出はじめている。
キースの予測通り、アルトとキースを一度に相手している一角黒豹の動きは、目に見えて鈍ってきていた。威力を押さえた魔法や峰打ちによる攻撃で、大きな怪我こそないものの、かなり疲れてきているようだ。
そのタイミングを見計らって、キースが大声で叫んだ。
「レシェンタ、今だ!」
すると、詠唱を終えて合図を待っていたレシェンタが魔法を放った。
「【閃光】!!」
レシェンタの構えた杖の先がカッと強い光を放ち、周囲は真っ白な光に包まれた。
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