第91話 さすがはAランク
コハクの土魔法で、一角黒豹の足元の岩が砂になってサラサラと崩れる。しかし、一角黒豹はその直前にヒラリと別の岩の上へと移動していた。
その間に、キース達がアルトとテナの元へと駆け寄り、ふたりを守るように周囲を囲む。
グルルと低く唸りながら、キース達を睨みつける一角黒豹。その目は血走っており、興奮状態であることが見て取れる。
一角黒豹が一声大きく吠えた次の瞬間――額の角が光を放ち、アルト達の頭上に稲妻が降ってきた。
咄嗟に発動したアルトの【安全地帯】とコハクの土壁のおかげで皆無事だったが、ビリビリと伝わってくる衝撃と轟音に言葉を失う一同。
「ハハッ…さすがはAランク。とんでもねぇな。」
「っ……笑ってる場合じゃないわよ。それで、どうするの?」
「討伐ならまだしも、生け捕りってことだろ。それもできる限り無傷でときた。となると、眠らせるか拘束するか…」
キースが考えを巡らせている間にも、頭上には容赦なく雷の雨が降り注ぐ。アルトは集中して、何重にも【障壁】を張って防御を固める。
「たしか、雷には土魔法が有効なのよね。」
「ふふ、正解よエメラ。実践では使い手の練度によって勝敗も変わってくるけれど、相性的には土魔法が有効。」
テナの傷を癒しながら答えたレシェンタの言葉に、誇らしげに胸を反らせるエメラ。
「アルトと一緒に勉強したもの。というわけでコハク、頑張ってくれるかしら?」
「勿論。」
エメラの問いかけに即答するコハク。
「拘束するなら…足元をぬかるみにして沈んだところを固めるか、落とし穴に落とすか…とにかく、やれることをやってみよう。コハク、頼むぜ。」
「わかった。今キースが言った罠をいくつか張ってみる。」
「それじゃ、私はコハクの罠まで一角黒豹を誘導するわ。アルトとエメラも援護をお願いね。」
雷の轟音の中で、手早く作戦を立てる一同。
「わかったわ。」
「やってみるよ。テナは僕の肩に乗っててね。大丈夫、お母さんと話ができるように、皆でがんばるからね。」
「にゃあ…」
レシェンタのおかげで頬の傷は癒えたものの、力なく答えるテナ。
「んじゃ、俺はレシェンタのサポートに回ろう。詠唱中は無防備になっちまうだろうからな。」
「そうね、任せるわ。」
「それじゃあアルト、コハク、俺が合図したら【安全地帯】と土壁を消してくれ。皆も、合図と同時に散って、あとは各自の判断で動けよ。」
キースの言葉に、無言で頷きを返す一同。
「そろそろだぞ。3…2…1…今だ!」
キースの合図と同時に【安全地帯】と土壁は消え、皆が一斉に別の方向へと駆け出した。
読んで下さってありがとうございます。
誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
ブックマークや評価、いいね等で応援していただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!