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番外編 不思議なことを起こす子供

しばらく散策していると、村の外れにある墓地まで来てしまった。ふと見ると、丁度墓参りをしている者がいる。

村で唯一の医師だというその男性に話を聞くと、それは数か月前に亡くなった“おばば様”のお墓らしい。


“おばば様”に関しては、報告書にも記述があった。たしかアルト君に読み書きをはじめとした様々な知識を授けてくれた人で、拠り所でもあったとか…


「おばば様が亡くなってからなんですよ、獣害や日照りが起きて村が荒れ始めたのは。はじめは呪いだの祟りだのと言う輩もいたんですが、おばば様はそんなことをする人じゃない。」


一緒に墓地をゆっくりと歩きながら、医師の男と会話を続ける。


「むしろ、おばば様が生きていたからこそ、その間はこの村が守られていたんじゃないか…と、私は思っているんです。」


「その…おばば様という人は、特殊な力を持った人だったんですか?何か、おまじないが得意とか、不思議なことを起こせるとか…」


報告書によると、アルト君の魔法はそのおばば様と一緒に練習してきたものだったらしい。もしかするとおばば様は、隠居した凄腕の魔法使いだったとか?


「いいえ、そのような話は聞いたことがありません。ただ穏やかで優しく、物知りな方でしたよ。」


「そうですか。」


なんだ、見当違いだったか。だが、医師の男は何かを思い出したようにはっとした表情を見せる。


「そういえば、おばば様によく懐いていた子供がいたんですが…もうこの村にはいませんがね。不思議なことを起こすといえば、その子にはそんな噂がありました。」


恐らくそれはアルト君のことだろう。動揺を悟られないように、慎重に医師から情報を引き出す。


「不思議なことを起こす子供、ですか。」


「ええ。確か、ア…アラン…いや、アルトという名でした。見た目は至って普通の子でしたが…何でも、物を浮かせたとか花を咲かせたとか。本当かどうかはわかりませんがね。」


それはきっと、アルト君のマギアの力が発現した証拠だろう。都会ならば貴族の養子にだってなれる、稀有な才能だというのに…無知ってのは恐ろしい。


その後も医師の男は色々と話してくれた。


おばば様が亡くなった時のアルト君の様子。

彼が家を出て、村からもいなくなったこと。

その少し後になって、両親や兄が彼に対して行っていた所業が周囲に知れ渡ったこと。

それはアルト君の兄、アーノルドが「出来損ないの弟を追い出した」と得意気に話していたことに端を発したこと。


ほどなくして、一家の姿はいつの間にか家からも村からも消えていたこと。

家財一式がなくなっていたことから、どこか他所の村へ移り住んだのだろうと思われること。


「何か、事件や犯罪に巻き込まれたということは…?」


「こんな田舎じゃ、事件なんてそうそう起きやしませんよ。あの一家も、アルトへの態度は思うところがあったが、大それた悪さをするような人たちじゃなかった。」


彼らは善良な人間ではなかったが、際立って悪人というほどでもなかった、と。まぁ大半の人間はそんなものだろう。


「おおかた、噂が広まって村に居づらくなったんでしょう…自業自得ですが。その上獣害や日照りが続いていた頃でしたので、ここぞとばかりに出て行ったんでしょうね。」


「なるほど。」


その後も何人かの村人に話を聞いて回ったが、医師の男の話と大筋は一致していた。


村からレカンタの街までに通るいくつかの村でも聞き込みをしたが、アルト君らしき少年の目撃情報は皆無だった。

彼は本当にひとりで森の中を進んだようだが…たった11歳の少年が、なんて無茶をするんだ。


結論―――

冒険者アルトの生まれ育った村での交友関係に、Bランク冒険者として不適格な事実は見当たらない。

両親と兄は村を出ており、行方は不明。彼らが連絡を取り合う手段はない。

以後彼らのいかなる行動に関しても、当該冒険者には無関係と判断する。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

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