番外編 あるギルド職員の仕事
俺の名はチェルト。レカンタの街にある冒険者ギルドの職員をしている。
今回の仕事は、とある冒険者の身辺調査。
そのとある冒険者ってのが、噂の少年Bランク冒険者――名はアルト。
これがまた物凄く強い。
いきなりBランクなんて、普通じゃありえない。大抵はD~Fランクくらいから始めるものだ。
だが、それもあの実力を見れば納得だった。
Aランク魔獣である剣大蛇をほぼ一人で倒したというのだから。
生憎とその瞬間を見たわけじゃないが、それでも十分だった。
巨大な蛇を閉じ込めた、これまた巨大な氷の山。あれは彼の魔法によるものだった。
そしてその氷の山を融かす強力な炎魔法と、炎の鎖のようなもの。
おまけに氷の中の剣大蛇には焼け焦げ一つ残さない、精密な魔法のコントロール。
どれをとっても規格外の魔法使いだった。
そんな彼の生い立ちや人間関係の調査だというから、行き先はさぞや立派な貴族様のお屋敷あたりだと思ったのだが…渡された地図の通りに行くと、とんでもない辺境の地…もといド田舎へ来てしまった。
旅の道中、ギルマスから渡された書類(冒険者アルト本人からの聞き取り調査報告書)に目を通していた俺は、我が目を疑った。
彼が生まれた村では“魔力持ち”の存在は認知されていない。そのため、幼いころから不可思議な現象を起こしていたアルト少年は家族から気味悪がられ、遠巻きにされ…というか虐待されていた。
詳しくは割愛するが、まぁ酷いもんだった。
こんな環境で育って、よくあれだけ純粋でまっすぐな子になったもんだと、感心すら覚える。
それにしてもこの村――田舎だとかそういうのは別にして…なんというか、荒れている印象だ。
行き倒れている者はいないが、住民はみな痩せている。
牧場や畑にある小屋や柵は所々壊れたままで、修理が間に合っていない。
旅人のふりをして村人にそれとなく話を聞いたところ、獣害や日照りが続いてこの有様なのだという。
なんでも、ここ数年は村の作物を荒らしたり家畜を襲ったりする獣の被害がぱったりと止んでいたらしい。
それが、最近になって被害が出始め、徐々に増えてきたのだという。
日照りについても、思い返してみるとここ数年はそのようなことはなかったのに、としきりに首を傾げていた。
所謂平和ボケ、というやつだったのだろう。
獣害も日照りも、久々のことで多少混乱はしたし手を打つのも遅れた。が、手遅れだったわけではない。
ちょうど今、村人同士で知恵を出し合って立て直している最中らしい。
柵や畑を直し、水を確保し、作物が実り、家畜が育てば、腹一杯食べて村人も活気を取り戻すだろう。
「間の悪い時に来て気の毒だが、次に来た時にはもうちょっとまともなもてなしを期待しておいてくれ。」とのことだった。
…ふむ。村の状況については、一応ギルマスに報告しておこう。
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