第78話 コハクの判断は
「ところで、今日はどういった用向きかな?私たちとしては、噂の冒険者から今までの活躍について聞ければと思っていたのだけれど…そちらも何か用があったんだろう?」
ここでレシェンタはアルトに目配せする。コハクの反応がどうかを知りたいという合図だ。それに気づいたアルトは、コハクとエメラが入っているカバンをポンポンと軽く叩いた。
コハクが領主夫妻に“例の首飾りを渡してもよい”と判断したならば、この合図でカバンから出てくる。
出てこなければ“首飾りは渡せない”ということだ。
その場合は、ここへ来た理由を“ダンジョンで手に入れた宝石を献上する”と伝える予定だった。
コハクの判断は―――
前者だった。
ひらひらと半透明の羽で羽ばたきながら、アルトのカバンから出てきたコハクとエメラ。ふたりはアルト達と領主夫妻との間にある机に降り立つ。
突然目の前に現れた精霊に驚き、目を丸くする領主夫妻。
緊張しているのか、俯いてなかなか言葉を発せないコハク。見かねたエメラが助け舟を出す。
「私は風の精霊、エメラ。こちらは土の精霊のコハク。二人ともアルトと契約しています。あなた方に、お渡ししたいものがあります。」
「まあ、綺麗な精霊さんたちね。アルトさんはテイマーであり、精霊と契約しているマギアでもあったのね。本当に凄いわ…一体、何をいただけるのかしら。」
そう言ってにこやかに笑う領主夫人。その様子はまるで、幼子からのプレゼントを待つ母親のようだ。プレゼントがありふれた貝殻や小石でも、全力で喜ぶ準備をしているかのような…
「アルト、お願い。」
コハクの言葉にコクリと頷いて、マジックバッグから箱を取り出し、机の上に置くアルト。
「これ、です。あなた達に…受け取ってほしい。」
微かに震える声でそう言って、コハクはゆっくりと箱を開けた。
その中には、例の“フランチェスカ姫の失われた首飾り”が入っていた。
「これ…は……」
目を見開いて固まる領主夫人。
「どうしたんだい?……っ…これを、どこで?いや、それよりも……」
夫人のもとへと歩み寄って箱の中身を見た領主も、夫人と同様に驚いた様子だ。
「うん、君は一旦座っていなさい。さぁ、お茶を飲んで落ち着いて。よければ皆さんもどうぞ。」
ブツブツと呟きながら少し考えた領主だったが、まずは夫人を落ち着かせようと机の上に用意してあったお茶を淹れる。
アルト達はどうすべきかと一瞬視線を交わしたが、レシェンタに倣って、とりあえずお茶を飲むことにした。
その間に夫人を落ち着かせた領主は、足早に執事のもとへと向かい、何やら指示を出していた。
ほどなくして戻った執事から何かを受け取った領主は、机の上に“それ”を広げる。
それは、古い釣書の肖像画だった。
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