第71話 失われた首飾り
土の精霊が語り終えると、少しの間沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、レシェンタだった。
「はー…もしかしてとは思っていたけれど、やっぱりそれは“フランチェスカ姫の失われた首飾り”だったのね。」
「なんだそりゃ?」
「言葉の通りだけど。」
目を丸くしたキースの言葉に、端的に答えるレシェンタ。そしてあまりの物言いに溜息を吐くキース。
「おい、さすがに雑すぎるだろ。アルト達もいるんだから、わかるように説明しろよ。」
「それもそうね…わかったわ。」
キースに対しては、軽口を返す癖がついてしまっていたレシェンタ。キースの言葉でアルト達の存在を思い出して、少し反省したように肩をすくめ、そして語り始めた。
それはまるで、母親が幼子に童話を語って聞かせるような口調で始まった。
◇
昔々、隣国の美しい王女――フランチェスカ姫がこの国にやってきました。
彼女はそれはそれは美しい首飾りを持っていたそうです。
しかし、彼女はその首飾りを大切にするあまり、この国へ来てからは一度も身に着けることがありませんでした。
誰にも見られないように、ずっと大切に金庫の中に隠していたのです。
ですが、彼女が亡くなった後に金庫の中を確かめてみると…中は空っぽでした。
誰もが驚き、首飾りの行方を捜しましたが、ついに見つかることはありませんでした。
首飾りがどこにあるのか、いつなくなったのかは、誰にもわからないままなのです。
◇
レシェンタの話に、目を丸くするアルト達。先ほど土の精霊が語った話と大筋が一致している。
「実物を目にする日が来るとは思わなかったわ。領主様が必死になって捜していたものが、こんな近くにずっとあったなんてね。」
「なんだって領主が…その、失われた首飾りってのを捜すんだ?値打ちモンだからか?」
キースの言葉に、土の精霊がピクリと反応する。
「彼に限って、それはないと思うわ。というか、捜しているのは奥様のためなのよ。」
「あー、ご婦人方が喜びそうだもんな。この豪華な首飾り。」
「だからそんなんじゃないって!見なさいよ、土の精霊が警戒してるじゃない。」
レシェンタに指摘されたキースが土の精霊の方を見てみると、土の精霊は首飾りを収めた箱の蓋を閉じてぎゅっと抱え、キースにジト目を向けている。
「あ……っと、悪かった。」
慌ててバツが悪そうに謝るキース。
「俺が言ったのはあくまで一般論でだな…俺自身はそれを盗るつもりも売るつもりもないから、安心してほしい。これは今はアンタが守ってて、アルトに渡したいって話だろ。わかってるよ。」
必死に弁明しつつ、盗らないという意思を示すためか、キースは両手を挙げて数歩後ずさる。
「大丈夫よ。こう見えてキースは悪い人間じゃないから。私たちが保証するわ。」
そう言ってフォロー(?)するエメラと、一緒に頷くアルト。キースが「こう見えてって…」などとボソボソ言っているが、それは知らないふりだ。
精霊とその契約者の“保証する”という言葉にほっとしたのか、少しだけ目力を緩める土の精霊。
「まったく…話を続けるわよ。」
その様子を呆れたように、でもどこかおかしそうに見ながら、レシェンタは言葉を続ける。
「そのフランチェスカ姫と嫁ぎ先の公爵の子孫が、今ではレカンタの街の領主になっているのよ。今の領主様は入り婿だって聞いたから、直系の子孫は夫人の方でしょうね。で、夫人は“先祖の大切なものだから見つけたがっている”ってところだと思うわ。」
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