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第71話 失われた首飾り

土の精霊が語り終えると、少しの間沈黙が流れる。


その沈黙を破ったのは、レシェンタだった。


「はー…もしかしてとは思っていたけれど、やっぱりそれは“フランチェスカ姫の失われた首飾り”だったのね。」


「なんだそりゃ?」


「言葉の通りだけど。」


目を丸くしたキースの言葉に、端的に答えるレシェンタ。そしてあまりの物言いに溜息を吐くキース。


「おい、さすがに雑すぎるだろ。アルト達もいるんだから、わかるように説明しろよ。」


「それもそうね…わかったわ。」


キースに対しては、軽口を返す癖がついてしまっていたレシェンタ。キースの言葉でアルト達の存在を思い出して、少し反省したように肩をすくめ、そして語り始めた。


それはまるで、母親が幼子に童話を語って聞かせるような口調で始まった。



昔々、隣国の美しい王女――フランチェスカ姫がこの国にやってきました。

彼女はそれはそれは美しい首飾りを持っていたそうです。


しかし、彼女はその首飾りを大切にするあまり、この国へ来てからは一度も身に着けることがありませんでした。

誰にも見られないように、ずっと大切に金庫の中に隠していたのです。


ですが、彼女が亡くなった後に金庫の中を確かめてみると…中は空っぽでした。

誰もが驚き、首飾りの行方を捜しましたが、ついに見つかることはありませんでした。

首飾りがどこにあるのか、いつなくなったのかは、誰にもわからないままなのです。



レシェンタの話に、目を丸くするアルト達。先ほど土の精霊が語った話と大筋が一致している。


「実物を目にする日が来るとは思わなかったわ。領主様が必死になって捜していたものが、こんな近くにずっとあったなんてね。」


「なんだって領主が…その、失われた首飾りってのを捜すんだ?値打ちモンだからか?」


キースの言葉に、土の精霊がピクリと反応する。


「彼に限って、それはないと思うわ。というか、捜しているのは奥様のためなのよ。」


「あー、ご婦人方が喜びそうだもんな。この豪華な首飾り。」


「だからそんなんじゃないって!見なさいよ、土の精霊が警戒してるじゃない。」


レシェンタに指摘されたキースが土の精霊の方を見てみると、土の精霊は首飾りを収めた箱の蓋を閉じてぎゅっと抱え、キースにジト目を向けている。


「あ……っと、悪かった。」


慌ててバツが悪そうに謝るキース。


「俺が言ったのはあくまで一般論でだな…俺自身はそれを盗るつもりも売るつもりもないから、安心してほしい。これは今はアンタが守ってて、アルトに渡したいって話だろ。わかってるよ。」


必死に弁明しつつ、盗らないという意思を示すためか、キースは両手を挙げて数歩後ずさる。


「大丈夫よ。こう見えてキースは悪い人間じゃないから。私たちが保証するわ。」


そう言ってフォロー(?)するエメラと、一緒に頷くアルト。キースが「こう見えてって…」などとボソボソ言っているが、それは知らないふりだ。

精霊とその契約者の“保証する”という言葉にほっとしたのか、少しだけ目力を緩める土の精霊。


「まったく…話を続けるわよ。」


その様子を呆れたように、でもどこかおかしそうに見ながら、レシェンタは言葉を続ける。


「そのフランチェスカ姫と嫁ぎ先の公爵の子孫が、今ではレカンタの街の領主になっているのよ。今の領主様は入り婿だって聞いたから、直系の子孫は夫人の方でしょうね。で、夫人は“先祖の大切なものだから見つけたがっている”ってところだと思うわ。」

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

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