第64話 大した奴だよ
「おおい、こっちの鱗を剝がすのを手伝ってくれんか。」
「おいちょっと待て。お前のところ取りすぎじゃないか。」
「剣大蛇の肉って食えるのか?」
「さあ?試してみなよ。」
各工房の職人たちはワイワイガヤガヤと剣大蛇の素材を分けていた。
移動中に配分についてはある程度話し合っていたはずだが、やはり現場ではいくらか揉めることもあった。その度にギルド職員が仲裁に入り、作業を進めるよう促す。
「予定通り、牙と尾は街に戻ってからの入札形式にした方がいいですかね。」
そうギルマスに話しかけるのは、栗色の髪にそばかすのあるフォーニだった。
「ああ、その辺は数が限られてるからな。頼む。」
「わかりました。それにしても彼の魔法、凄かったですね。あんな火力だったのに、傷どころか焼け焦げひとつないって職人たちが驚いてましたよ。」
「そうだな。(焦がしたり傷つけたりは最小限にとは言ったが、まさか本当に焼け焦げも傷も作らないとはな。大した奴だよ。)」
改めてアルトの凄さを噛み締めていたギルマスの元へ、緑色の髪のポルカが駆け寄る。
「ギルマス、ちょっといいですか。」
「ああ、今行く。」
◇
街に戻った翌日、アルト達は冒険者ギルドに呼ばれた。
「――という訳で、これが今回の…ガルザの分の報酬だ。」
「「ありがとうございます。」」
ガルザの討伐報酬は、はじめに提示された3頭分の報酬。
剣大蛇に関してはまだ買取り金額が確定していないため、保留となった。
アルトもキースも金銭的な蓄えはそこそこあるので、臨時分の報酬が遅れるのは問題ないと二つ返事で承諾した。
そして驚くことに、今回の件で“アルトをAランクに昇格させるべきだ”という声がギルド内外から上がったらしい。
アルトは、自分がギルドの人や職人たちに“冒険者”として認められたことに、嬉しさがこみ上げた。
実際、あの現場に居合わせた人たちからのアルトの評価はうなぎ上りだった。
冒険者・魔法使いとしての圧倒的な実力。
それでいて謙虚で健気な人柄。
駆け寄った皆にもみくちゃにされても笑顔を絶やさなかった朗らかさ。
剣大蛇の解体に必要な炎や水を魔法で提供する気前の良さ。
素材の積み込みや運搬を率先して手伝う優しさ。
剣大蛇の一件だけで“冒険者アルト”の実力とその人柄はギルド職員と武器工房の職人たち、そしてその周辺の人々にまで知れ渡ったのだ。
「正直、俺もアルトの実力はAランクかそれ以上のものと思っている。だがな、まだBランク冒険者としての身辺調査も済んでない。それに、たった1回の依頼でおいそれと昇格させる訳にはいかないんだ。」
ギルマスの言葉にキースは少し残念そうな顔をしたが、仕方ないと頷いた。
当のアルトはというと、キースやみんなと一緒に冒険者を続けられるならランクは気にしないと、あっけらかんと言った。
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