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第61話 白い馬車

アルト達が急いで外に出ると、ギルマスをはじめとした大勢の人が集まっていた。その後ろには荷車や馬車も見える。


アルトが呆気に取られていると、ギルマスが話しかけてきた。


「ようアルト。準備はできてるか?といっても、アルト達には案内を頼むだけなんだがな。」


「あ、はい。大丈夫です。お待たせしちゃってすみません。」


申し訳なさそうに謝るアルトに、ワハハと豪快に笑って答えるギルマス。


「いや、こっちが予定よりも早く揃っただけだから、気にしなくていいぞ。皆気が急いたようでな。それよりもキース、思ってたよりも元気そうだな。」


「はい!アルトとレシェンタのおかげでこの通りピンピンして…ま…」


表情こそ笑顔だが、青筋を立て、ゴゴゴと音がしそうなほどの気迫を放っているギルマスは、どう見ても怒っている。それを見たキースは言葉を失い、青ざめて固まる。


「そうかそうか。それじゃあ移動の間、あっちの馬車でゆっくり話をしような。」


そう言ってガシッと肩を掴まれたキースは小刻みに震えていたようだった。

そんなことは露知らず、アルトはギルド職員に「それじゃあアルトさんたちは先頭の馬車へどうぞ」と白い馬車の方へと連れて行かれていた。


「それじゃあ皆、さっき話した通りだ。先頭の白い馬車について行ってくれ。」


ギルマスの号令で、馬車や荷車の一団は続々と動き始めた。



アルトの案内で進んだ馬車は、3時間ほどで目的地に到着した。

白い馬車からぴょんと飛び降りたアルトは、ぐっと背伸びをする。


別の馬車に乗っていたキースは、げっそりとした様子で降りてきた。どうやらギルマスからこってりと絞られたらしい。


その後も続々と馬車や荷車から降りてきたギルド職員や武器職人たちは皆、巨大な氷の山と、その中の頭部のない剣大蛇スパーダスネークを見てあんぐりと口を空けていた。


アルトが出した沢山の氷の壁はどれも半分近く融けていたが、剣大蛇スパーダスネークを閉じ込めた氷の山は表面が少し融けた程度だったようだ。


皆が驚いて固まっているうちにアルトは氷の山の陰へと駆けていき、こっそりと剣大蛇スパーダスネークの頭部をカバンから取り出して転がしておいた。それから少し離れた所に3頭のガルザも重ねておく。


魔法のカバンのことはまだ内緒なので、こっそり戻しておくようにとギルマスから忠告されていたのだ。



「すっげぇ…本当に剣大蛇スパーダスネークだ。」


ギラリと光る鋭い尻尾を見て、放心したようにポツリと漏らすのは、黒髪の青年――ロンド。


「こんなにでかいのを、あんな子供が倒したってのかよ。」


ゴクリと唾を呑み、アルトの方をチラリと見ながら呟くのは、茶髪の青年――チェルト。


「そんな言い方は失礼だよ。群を抜いて若いとはいえ、彼は立派なBランク冒険者なんだから…敬意をもって接さないと。」


そんな彼を窘めるのは、栗色の髪にそばかすの青年――フォーニ。


「言われなくてもわかってるっての。俺たちだって疑うつもりはないけどよ…世の中、信じ難いことってのはあるモンだぜ。例えば目の前の氷漬けの大蛇とかな。」


先の二人に同意しつつ、フォーニを宥める緑色の髪の青年――ポルカ。


ギルマスから“この近くで剣大蛇スパーダスネークが討伐された。素材と死骸を回収に行くから、手の空いている者や見てみたいものは手伝え。”と言われて、この4人の若いギルド職員は二つ返事でついてきたのだ。


移動中の馬車の中で、アルトを案内した別の職員から話を聞いて興奮した4人。

――剣大蛇スパーダスネークを討伐したのは、どうやら噂の少年Bランク冒険者らしい。

――どうやって倒したのか?

――そもそもAランク魔獣の討伐に、なぜBランクの…それも新人冒険者が?

――熟練のパーティーに新規加入したとか?

――そんな感じじゃなかったけど…

――もともとはガルザ複数頭の討伐依頼だったのが、なぜかこんなことになったらしい。

――いや、意味が分からない。


不十分な情報ゆえに、憶測に憶測を重ねて会話は弾んだ。

しかし、そんな数々の憶測を吹き飛ばすほどに――目の前の現実は、現実離れしていた。

読んで下さってありがとうございます。


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