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第60話 突然の申し出

自分以外の人が魔法を使う様子を初めて見るアルトは、レシェンタの一挙手一投足に注目している。


「光よ、我が魔力を以て彼の者の穢れを払い、清め、不浄と苦痛より解き放て――【浄化】(クリーン)


詠唱が終わると同時に、パアァッと柔らかい光が部屋を満たした。


「ふぅ、もう治ったはずよ。歩いてみて。」


「ああ。」


テナがぴょんとキースの膝から飛び降り、それに続いてゆっくりと立ち上がるキース。足を進めると、ふらつきも転びもせず、いつもと同様に歩くことができた。


「うん、痺れも全くない。ありがとな、レシェンタ。」


「どういたしまして。」


「すごい!すごいや!キース、治ってよかったぁ!」


「にゃあ!」


感極まってキースに飛びつくアルトと、一緒になって飛びつくテナ。エメラはその様子を微笑ましげに見ている。


「うわっと…とと。」


勢い余って転びそうになったところを、キースはどうにか持ちこたえた。

数秒間キースにしがみついた後、がばっと振り返ったアルトは真剣な顔でレシェンタに向き直った。


「レシェンタさん、僕に魔法を教えてください!」


アルトの突然の申し出とあまりの気迫に面食らって、目を丸くするレシェンタ。



「んー…アルト君はさ、魔法で剣大蛇スパーダスネークを倒したのよね。実力的にはもう十分じゃないかな。むしろ、その年齢にしては強すぎるくらいだと思うけれど。」


レシェンタは諭すように、優しい口調で語りかけた。しかし、アルトは首を振って否定する。


「いいえ。僕ひとりで剣大蛇スパーダスネークを倒したわけじゃありません。それに、僕だけじゃキースを完治させられませんでした。」


俯いてぐっと拳を握り、ポツリポツリと言葉を吐き出す。


「それどころか、オロオロするだけで助けることすらできなかったかもしれません。今回は街が近かったからよかったけど、そうじゃなかったら…」


そこまで話すとパッと顔を上げ、真正面からレシェンタの目を見て懇願する。


「詠唱も、魔法のことも、何も知らない自己流のままじゃダメなんです。もっとちゃんと、魔法を使えるようになりたいんです。自分自身のためにも、パーティーメンバーであるキースのためにも……お願いします!僕に魔法を教えてください!」


必死な様子で頭を下げるアルトに、困惑の表情を浮かべて押し黙るレシェンタ。

そこへやれやれと助け舟を出したのはキースだった。


「とりあえず魔法の基礎だとか、レシェンタの得意な光魔法のことだけでも教えてやればいいんじゃねえか?レシェンタだってアルトの魔法のことを聞きたがってたんだし、お互い様ってことでさ。」


「……わかったわ。」


長い沈黙の後、レシェンタは重々しく頷いた。


「光魔法、みっちり教えてあげるわ。キースがまた無茶して死にかけても、すぐに治せるようにね。」


そう言ってニコッと笑うレシェンタに、アルトも様子を見ていたエメラもホッとした様子で頷く。


「ありがとうございます!」


「おいおい、そう何度も死にかけやしないっての。」


「どうだか。」


そんなやり取りに一同がアハハと笑っていると、再びノックの音が響いた。

どうやらギルマスたちの準備が整ったようだ。


「あ!いっけない…剣大蛇スパーダスネークの身体を回収に行くから1時間後に集合って、ギルマスさんに言われてたんだった。案内を頼まれてるんだよ。」


「あー、なるほどな。ま、そんなに待たせちゃいないだろうから気にするな。んじゃ、行くか。レシェンタもついて来るだろ?」


「もっちろん!」

読んで下さってありがとうございます。


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