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第59話 キースとレシェンタ

剣大蛇スパーダスネークに一人で突っ込んでいくなんて…本当に、なんて無茶をしたのよ。」


キースからのメモを受け取り、急いで駐屯所に駆けつけたレシェンタ。

息を切らせて心配そうにしていた彼女だったが、「よっ」と手を上げながら出迎えたキースを見て脱力した。


それから詳しく事情を聴いた彼女は、むすっとした様子でキースを睨みつけている。


「勝算はあったさ。現に討伐は完了したし、俺は生きてる。」


「全部アルト君のおかげでね。」


冷たい視線を向けたままピシャリと言うレシェンタ。無茶をして死にかけたにも関わらず、相変わらず飄々とした様子のキースに相当怒っているようだ。


「おいおい、全部ってことはないだろう。アルトがいたからこそってのは認めるが、エメラもテナも、もちろん俺も…それぞれ頑張ったんだぜ。な?」


「にゃあ。」


「ふぅん。」


キースの言葉を適当にあしらいつつ、彼の膝の上にいるテナをひと撫でするレシェンタ。

そしてキースの全身をざっと見て確認する――と、服が大きく裂けて血がべったりとついたキースの左腕部分でその視線を止め、彼女は目を見開いた。


血のつき方からして、魔獣の返り血ではない。しかし、服の下の皮膚は滑らかで、傷など見受けられない。奇妙な状態に首を傾げるレシェンタ。


「それより、解毒を頼むよ。毒消しポーションとアルトの魔法のおかげで苦しさや痛みはないんだが、まだ痺れが残ってて歩けないんだ。」


キースの言葉に、レシェンタは戸惑いながらも納得した。アルトは以前にもキースの傷を癒していたはず…今回の傷も彼が治したのだろう、と考えるレシェンタ。


さすがにAランク魔獣の毒を解毒することはできなかったが、アルトに非はない。むしろそんなことができるのは、魔法を使えるマギアの中でもごく一握りなのだ。だからこそ、冒険者たちは依頼のレベルに応じてポーションを購入するのである。


「それだけ治ってるのなら、今すぐ完治させなくても大丈夫でしょう。むしろ逃げられないのなら好都合よ。先に説教の一つや二つや三つ、黙って聞きなさい。」


「勘弁してくれよ…」


「にゃあ?」


レシェンタの言葉に、うげっと天を仰ぐキース。そしてその様子を真似て上を見上げ、コテンと首を傾げるテナ。



コンコン、と駐屯所のドアをノックする音が響いた。


「どうぞー。」


レシェンタがお説教を中断して返事をすると、アルトとエメラが入ってきた。


「レシェンタさん!キースは治りそうですか?」


「ふふ、心配いらないわ。これから治すところよ。それにしても、アルト君の魔法って凄いのね。毒の効果以外は、傷も体力もほぼ全快。」


怪我をしていたはずのキースの左腕をつんつんと突きながら話すレシェンタ。

キースが「おいっ」と声を掛けるも、素知らぬ顔だ。


「キースから聞いたんだけど、【治癒】(ヒール)だけじゃなくて【浄化】(クリーン)も使えるんだって?」


「は、はい。毒は完治させられなかったですけど…」


そう言って視線を落とすアルト。そんなアルトの肩に手を添えて屈み、覗き込むように目を見ながら話しかけるレシェンタ。


「そんなに気を落とさないで。独学でそれだけの魔法が使えるなんて、凄いことよ。それに君はまだ若いんだから、伸びしろだって十分にある。」


「あの、もしよかったら、レシェンタさんが魔法を使うところ…見ていてもいいですか?」


「もちろんよ。じゃあキース、治療…というか解毒、してあげるわね。」


「やっとかよ。」


キースがポツリと文句を零すと、ギギギと音を立てそうな動きで振り返るレシェンタ。


「何か文句でも?」


「イイエ。滅相モゴザイマセン。」


にっこりと笑顔で聞き返したレシェンタに、冷や汗を流しながら返事をするキース。


「まったく…」


ブツブツと言いながら、袖から短い杖 を取り出すレシェンタ。その杖をキースの左腕に向け、厳かに詠唱を始めた。

読んで下さってありがとうございます。


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