第6話 新たな出会い
村を出たアルトは、森の中を歩いていた。
本来、村や街を行き来するのならば、整備された街道を行く方が安全だ。しかし、少年がたった一人で歩いていると目立ってしまう。
子供の一人旅を見咎められて村へ送り返されては困ると考えたアルトは、街道から大きく逸れないように気をつけながら、森の中を行くことにしたのだ。
時折、街道の位置を確認したり果物を採ったりするために、木に登ることもあった。眠るときは、土の魔法で簡単な洞穴を作り、そこで眠った。夜の間に動物が襲ってこないよう、見えない壁を張ったり、防音の魔法をかけたりといった工夫もした。
あるとき、いつものように木に登っていると――
葉の間で淡く光る何かを見つけた。
明るい緑色に光るそれは、薄い4枚の羽をつけた、手の平ほどの大きさの少女だった。
「ど、どうしたの?大丈夫?えっと、えっと…」
突然のことに慌てたアルトだったが、深呼吸してどうにか落ち着きを取り戻す。呼びかけても返事がないことから、少女は気を失っているようだ。アルトは迷ったのち、少女をそっと両手で包み込み、魔法を使ってふわりと地面に降りた。
「よ……っと。ええと、何か敷くものを…これでいいかな。」
地面に大きな葉を敷いて、その上に少女を寝かせる。手をかざして治癒の魔法をかけようとしたが、魔法は発動するものの効いている気がしない。
「これじゃダメなのかな…」
落胆するアルトの脳裏には、力なく横たわるおばば様の姿がよぎった。しかし、今回は魔法そのものは発動しているため、あの時とは違うはずだ。アルトは頭をぷるぷると降り、必死で考える。
「そうだ!もしかすると、あれなら効くかも…」
アルトはごそごそとカバンの中を探り、魔法石の詰まった巾着を引っ張り出した。そして取り出した治癒の魔法石を、少女に近づけてみる。
何か効果があるかと期待したが、変化はない。それどころか、淡く光っていた少女の身体がゆっくりと明滅しはじめ、今にも消えてしまいそうだ。
「そんな、待って!ど、どうしよう……あ、もっと大きな魔法石なら…?」
これじゃない、これも違うと呟きながら、ポイポイと魔法石を周囲にまき散らすアルト。
すると――
少女の近くに転がっていた魔法石のひとつが、強く光った。
「え…これ?」
アルトは半信半疑で、緑色に光るその魔法石を少女に近づけてみた。魔法石が少女の手に触れた途端、その場は光に包まれた。眩しさに驚いたアルトは、思わず目を閉じた。
「わあっ!」
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