第57話 街へ戻ろう
「これでよし。それじゃあ街へ戻ろうか。」
切断した剣大蛇の頭部を氷ごとカバンに詰め込んだアルトは、キースの方へと向き直って言った。
「そう…だな。」
「どうかしたの?もしかして、討伐の証拠って他のものの方がよかった?」
苦笑いしているキースの様子に、オロオロと慌てるアルト。
「いや、気にしなくていい。他に持って行けるものがないから、それでいいだろう…多分。」
ギルマスが頭を抱える様子が目に浮かぶが、気にしてもしょうがないと割り切ることにしたキース。
「街までは【飛行】で行こう。キースは歩けないだろうから、僕が【身体強化】で支えて飛ぶよ。」
「気持ちは嬉しいが、魔力は大丈夫か?随分と魔法を連発してただろう。」
「まだ大丈夫だよ。心配だったら一応、風の魔法石を持って飛ぶから…って、あれ?そう言えば、カバンをどこに置いたっけ。」
周囲をキョロキョロと見回すと、カバンは二つともキースの近くにあった。アルトが毒消しのポーションを慌てて探したときに、肩から外していたのだ。
「あったあった…って、あれ?」
荷物用のカバンをよく見ると、蓋のところがモゾモゾと動いている。隙間から黒い尻尾が覗いていることから、テナがカバンを探っているのだとわかった。
「テナ、そんなところで何してるの?」
「にゃあ~」
テナは、カバンから魔法石の入った袋を引っ張り出していた。そして、コロリと転がる蜂蜜色の魔法石。
「魔法石?でも、僕が欲しいのはこれじゃなくて、風の――緑色の魔法石だよ。」
「にゃ、にゃあ!」
違うと言いたげに首を振ったテナは、鼻先でちょんと魔法石を突いて、キースの方へと転がした。
「俺?」
昔アルトがおばば様に渡したのと同じ、蜂蜜色の魔法石。これには癒しの力――光魔法の魔力が宿っている。
「あ、もしかして…これをキースに?」
「にゃあ!」
大きく頷くテナの仕草に、思わず笑みを零すアルト。
「ふふ、それじゃあキースはこれを持ってて。光の魔法石だから、癒しの力があるはずだよ。」
「お、おお。ありがとう。」
アルトはキースに蜂蜜色の魔法石を渡し、自分用には緑色の魔法石を取り出し、ポケットに入れた。
「よし、それじゃあ今度こそ街へ戻ろう。テナはカバンの中に入っててね。」
「にゃあ。」
テナがカバンに飛び込んだのを見届けたアルトは、自身に【身体強化】の魔法をかけた。そしてキースに肩を貸し、【飛行】を使ってレカンタの街へと急いだ。
エメラはそんなアルトの隣を飛びながら、風を操ってアルトの飛行を補助した。
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