第56話 多分できるよ
「それよりも、ギルドにアイツのことを報告しないと…おー、壮観だな。大蛇の氷漬け。」
キースが視線を向けた先には、氷の山に閉じ込められた剣大蛇。
口を大きく開けたその姿は、今にも噛みついてきそうだ。無論、氷の中からでは無理な話なのだが。
「これ、氷が融けたら実は生きてました…とかならないよな?」
「うーん…どうだろう。相手はAランクだし、絶対に死んでるとは言い切れないかも。」
冗談のつもりだったのだが、アルトの思わぬ返答に口元がヒクつくキース。
「…そっか。首を落とせたら間違いないんだが…氷の中じゃ無理だし、何より剣大蛇は硬いからな。」
「多分できるよ?」
どうするかなぁとひとりごちるキースの横で、あっけらかんと言い放つアルト。
「…は?」
「やってみようか。エメラ、一緒にあれを試したいんだけど、できる?」
「いいわよ。テナはキースと一緒に待っててね。」
「にゃあ~」
「お、おい、ちょっと待て。」
慌てて呼び止めるキースに、二人揃ってキョトンとした顔で振り返る。
「「?」」
「あー…その、何だ。首を落とすんなら、血飛沫とか浴びないように気をつけろよ。」
「そうだね、気をつけるよ!」
そう言ってアルトは助走をつけ、エメラと一緒に【飛行】で飛び上がった。
(何を訳の分からんことを言ってんだ俺は。つーか、あれだけ魔法を連発しておいてまだ何かできるのかよ。精霊の力を借りるにしても、剣大蛇の首がそう簡単に…)
「「【風刃】!」」
スパッ……ズンッッッ!!
(切れちゃったよ。)
「おいおい、冗談だろ。」
ハイタッチをしながら地上に降りた二人には、キースの呟くような声は聞こえていなかった。
「どうだった!?切った直後に断面も凍らせたから、僕たちも周りも全然汚れてないよ!」
キースの元へと駆け寄り、興奮気味に話すアルト。
「あ、ああ、そうだな…予想以上だ。まさか一瞬で切っちまうとはな。」
「えへへ。今の【風刃】はね、エメラと二人で旅してた時に一緒に考えた魔法なんだ。風を刃物みたいに鋭くして…初めて試した時は岩がチーズみたいに切れたんだよ。」
アルトは照れながら話すが、キースとしては「自分の奮闘はなんだったのか」とやるせない思いがこみ上げる。
そんなキースの心情を察したのか、エメラが口を挟む。
「でもまだ実戦向きじゃないのよね。二人でタイミングを合わせないといけないし、アルトにしては溜めが長い魔法なの。」
「そうそう。今みたいに動きが止まった標的ならいいんだけどね。動いてる剣大蛇にはとても当てられなかったよ。」
「え、あぁ、そうだったのか。」
「うん。だから、僕たちだけじゃ倒せなかったよ。キースが教えてくれなかったら、知らずに毒攻撃にやられてたかもしれないし…キースがいたから勝てたんだよ。」
「お、おぅ。そりゃどーも。」
アルトの屈託のない笑顔と真っ直ぐな言葉に、もごもごと口ごもるキースだった。
読んで下さってありがとうございます。
誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
ブックマークや、評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして応援していただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




