第53話 剣大蛇(スパーダスネーク)との闘い
「うお!危ねぇ!」
走って逃げるキースを追うように、何度も噛みつきを繰り出す剣大蛇。
しかし、それら全てを避け続けるキース。
そんなキースが心配で、思わず声をかけるアルト。
「キース!大丈夫!?」
「大丈夫だ!俺に構わず、お前は自分の役割に集中しろ!」
「う、うん!」
自分の役割――そう言われて、アルトは先ほど聞かされたキースの作戦を思い出す。
「――いいか、俺たちの存在に気づかれた以上、ここでアイツを仕留めるしかない。土の中に戻られると厄介だからな…俺が囮になってアイツの気を引く。だからアルト、お前が魔法で倒せ。」
そう言ってキースが囮役を買って出たため、アルトは慌ててキースに【身体強化】の魔法をかけたのだ。
実際、アルトの魔法による身体能力の底上げがあったからこそ、キースは今も一人で囮役を続けていられるのだ。
そうでなければ、いかにBランク冒険者とはいえ、たった一人で素早い剣大蛇から逃げ続けるのは容易ではなかっただろう。
「魔法で…あの蛇を倒すには…」
アルトは剣大蛇をどうやって倒すかを必死に考えた。キースからの助言を参考に――
「――剣大蛇の鱗は岩のように硬くて、鋼の刃も通らない。炎もほとんど効かない。だが、アイツも蛇の一種だ。身体を冷やせば動きが鈍るはず…」
(身体を冷やす…冷やすっていうと、水?いや、氷かな。)
「氷で動きを止める…えっと…【氷壁】!」
パキィィン!
一瞬にして大きな氷の壁が出現したが、動きの素早い剣大蛇はそれを軽々と避ける。
剣大蛇はギロリと周囲を見回し、アルトの存在に気づいた。しかし、すかさずキースが石を投げつけて剣大蛇の注意を引く。
「っ…【氷壁】、【氷壁】っ!」
アルトは幾度も剣大蛇の行く先に氷の壁を出現させるが、そのことごとくが避けられてしまう。
その間もキースは氷の壁に隠れたり登ったり、尻尾での攻撃を剣で受けたりしながら剣大蛇の気を引き続けている。
しだいに大量の氷によって周辺の空気が冷え、剣大蛇の動きが鈍ってきた。
「キースって意外と物知りなのね。私もアルトの図鑑を借りて勉強しようかしら。」
そんなことを呟きながら、上空から風を操っているのはエメラだった。
「――エメラ、風を操ってアルトが常に剣大蛇の風下になるようにしてほしい。蛇は鼻が利くから、臭いで居場所がバレちまうんだよ。アルトには攻撃に専念してほしいんだ…頼めるか。」
キースの指示通り、アルトの臭いが剣大蛇に届かないように風を操るエメラ。
ついでに、アルトの氷によって冷えた空気を滞留させ、剣大蛇の周囲の気温が急激に下がるように工夫もした。
その結果――
キースとエメラの思惑通り、アルトとしては想定外に、周辺の空気が冷えて剣大蛇の動きが鈍ってきた。
おまけに氷の壁が邪魔で、剣大蛇の動きが制限されてきている。
(今だ!)
キースと剣大蛇の距離が開いたその時――
「【水造形】!」
大量の水の矢が剣大蛇に降り注いだ。当然ながら、硬い鱗に弾かれた矢は全てが水滴となって飛び散った。
ダメージはなかったものの、明らかな攻撃魔法に反応した剣大蛇。周囲を見回し、そして見つけたアルトに向かって咆哮を上げながら突進してきた。
「ふぅーっ……【氷山牢】!!!」
パキィーーーーーーン!
集中したアルトの渾身の魔法で、剣大蛇は氷漬けになった。アルトの魔法で全身が水浸しだったためか、全身隈なく氷で覆われている。
「っはーー!よかった、やっと当たった。」
「やったわね、アルト!」
「にゃあ~!」
上空から降りてきたエメラと、カバンの中から飛び出したテナが、アルトにじゃれつく。
少し遅れて、ゼエゼエと息を切らしたキースがやって来た。
「ハハ…やったな。やっぱ凄いぜ、アルト…は……」
切れ切れに言葉を零したキースは、ドサッと音を立ててその場に倒れた。
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