第51話 頼もしい言葉
「アルト、この辺か?」
「うん。えっと…ほら!あの岩の影だよ。」
アルトが指すのは、15メートルほど離れた所にある大きな岩。
「あー、あれか。凄いな、言われなきゃわからなかったぜ。」
ガルザの灰色と黒の身体が岩の影にすっぽりと入っていて、遠目には全くわからない。
狩りのために隠れているのか、休んでいるだけなのかはわからないが、知らずに近くを通ると危なかっただろう。
「エメラ、テナ、危ないから君たちはこのカバンの中に隠れててね。」
「わかったわ。ただし、大きな魔力をもつ魔獣が近くにいるから、二人とも注意するのよ。」
「にゃあ!」
“強い魔獣”にどこか引っかかりを感じていたキースは、気になっていたことを口にした。
「なぁ、その魔獣って…テナの親って可能性はないか?一角黒豹はAランクの魔獣だから、かなり強いはずだぞ。」
キースの言葉に、パアァッと顔を輝かせるアルト。
「わぁっ…もしかするとそうかもしれないね。テナ、どう?君の親の気配とか臭いとか、わかる?」
「にゃ~…に?」
カバンの縁から顔を出したテナは、フンフンと鼻を鳴らし、首を傾げる。
「ん-、違うみたいね。もし親だったら、駆け出すくらい興奮するでしょうから。」
「そっかぁ……」
エメラの言葉に肩を落とすアルト。そんな彼に、キースは遠慮がちに声を掛ける。
「あー、適当なこと言って悪かった。そう簡単に見つからないからこそ、アルトが一緒に親を探すことにしたんだもんな。テナの親はまた皆でゆっくり探すとして、今は切り替えようぜ。」
「うん、そうだね。」
顔を上げたアルトの表情は晴れやかだった。どうやらキースが危惧したほど深く落ち込んではいなかったようだ。
「それじゃ、残りのガルザ1頭、サクッと倒して帰るか。」
「うん!」
「今度は俺が正面から行ってみていいか?俺もちょっとは活躍しときたいんだ。」
自らの腰に下げた剣の柄をトントンと触りながら、キースはアルトに頼み込む。
「うん、いいよ。もしキースが危なくなったら僕が助けるからね!」
「ハハ。言うようになったな、アルト。じゃ、ちょっと行ってくるぜ。」
アルトの頼もしい言葉に、ニヤリと笑みを返して背中を向けるキース。
そのままキースは足音を立てないようにゆっくりと、ガルザのいる岩の方へと向かう。
「…あれ?」
その時、アルトはある異変に気づいた。
「ちょっと待ってキース!さっきの強い魔獣の気配が、どんどん近くに…!」
アルトは慌ててキースに声を掛けた。しかし、ガルザに警戒して声のボリュームを抑えていたためか、キースは声に気づかない。
その上、魔獣の姿が見えないことが更にアルトの思考を混乱させる。
「え、待って…動きが速すぎるよ。それにもう近くのはずなのに姿が見えない…どこ?どこなの?」
「ねぇ、落ち着いてアルト……キース、待って!」
アルトを落ち着かせようと、ふわりとカバンから出てきたエメラ。とりあえずキースを止めようと、風の魔法でキースの耳に声を届ける。
「あ?…なんだ?」
キースがエメラの声に気づき、岩の手前数メートルのところで立ち止まったその時――
「!!!!」
轟音と共に地面の下から出てきた何かが、ガルザを岩ごと吞み込んでしまった。
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