第50話 初めての冒険
レカンタの街から依頼の場所――隣町付近の街道までは、2日ほど歩けば到着する。今回の依頼のポイントは、討伐対象の数がはっきりしていないことだ。そこは完全にアルトの【魔力感知】頼りになってしまう。
そこで時折休憩を兼ねて止まり、【魔力感知】で周囲を警戒しつつ進むことになった。
◇
「どうだ、アルト?」
「うん……まだ遠くだけどこの先に、前に戦ったのと同じくらいの魔獣がいるみたいだ。きっとガルザだと思うんだけど…3、いや4頭かな。」
アルトは集中するために閉じていた目をゆっくりと開いた。そして、キースの差し出した水を受け取り、口へと運ぶ。
「1頭は、他の3頭とはちょっと離れた所にいるみたいだけど。」
「4頭か…ギルマスの言った通りみたいだな。まだ他にもいるかも知れないから、警戒しながら進もう。」
「うん、そうだね。」
警戒しながら…と言いながらも、目線の先には無邪気に蝶を追いかけ回す、ハンカチを外した状態のテナ。その様子を見ているとつい頬が緩み、気が抜けそうになる二人。
キースは頭をブンブンと振り、気持ちを切り替える。
「それにしても【魔力感知】ってのは凄いな。正直、アルトのそれが無かったらこんな依頼受けられなかったぜ。」
「ありがとう。でも、それを僕に教えてくれたのはエメラだからね。エメラのおかげだよ。」
「う、うん、まぁ…そうとも言えるわね。(実はアルトの魔力感知の方が、私よりも精度が高いんだけどね。)」
◇
「キース、1頭そっちに行ったよ!」
「おう!任せろ!」
対峙するガルザは3頭。アルトひとりでも楽勝なのだが、パーティーなのだから連携して攻撃しよう、ということになった。
今回はアルトが魔法でできる限り拘束して足止めし、取りこぼしをキースが引き受けることにした。
ギルマスとの試験の際に【錬金】の鎖での拘束に時間がかかったため、拘束の魔法をもっと工夫してみたい、というアルトからの要望があったのだ。
今回は【錬金】の鎖ではなく、単純に【土造形】を使い、身体を土に埋めるような形で拘束した。
動きを止めるのならば【重力】という手もあるのだが、あれは出力の調整が難しく、アルトとしては生物にはあまり使いたくないのだ。
アルトは3頭のうち2頭のガルザを拘束することに成功した。しかし、最も遠くにいた1頭は土の拘束を振り切り、キースの元へと向かったのだ。
「っ…おらっ!」
キースは襲い来るガルザの突進をくるりと避け、回転した勢いのままガルザの背後から剣で攻撃した。攻撃は急所に入り、一撃でガルザは倒れた。
拘束済みの2頭を【炎弾】で無事仕留めたアルトは、キースの元へと駆け寄った。
「キース、大丈夫だった?」
「ふー…ああ、ちゃんと仕事があってよかったぜ。任せっきりは御免だからな。」
ニカッと笑って見せるキースに、アルトも笑みが零れる。
「さてと、こいつらをアルトのカバンに入れるのは俺に任せてくれ。アルトは【魔力感知】で周囲の警戒頼むな。たしか、もう1頭いるって話だったよな。」
「うん!じゃあそっちは任せるね。」
アルトからカバンを預かったキースは、まず自分が仕留めたガルザをその中に入れた。そしてアルトが拘束して倒した2頭の元に向かい、しまったと額に手を当てた。
「あー…アルトに拘束を解くように頼んどくべきだったな。」
身体の大部分が土に埋まった状態の2頭のガルザを前に、頭を掻くキース。しかし【魔力感知】に集中し始めたばかりのアルトに声を掛けるのも気が引ける。
「ん?何だ?」
頭を掻いているキースに近づいて、クイクイと服の袖や裾を引っ張るエメラとテナ。
「私たちが手伝ってあげるわ。」
「にゃあ!」
「本当か?そりゃ助かる。」
キースは剣の鞘で、エメラは風魔法で、テナは前足で、それぞれ土を掘った。
ほどなくして掘り出したガルザ2頭をカバンに入れ、ぐっと伸びをするキース。
「ありがとな、ふたりとも。んじゃ、アルトのところへ行こうか。」
「どういたしまして。テナ、行きましょう。」
「にゃあ!」
皆の足音に気づいたアルトは顔を上げ、キースに報告をする。
「キース、あっちに離れてたもう1頭がいるよ。それと…もっと向こうに、ガルザよりも強い何かがいるみたいなんだ。何かはよくわからないけど。」
「ガルザよりも強い何か…か。何にせよ、魔獣がいるなら確認はしておきたいな。戦闘になるかは見てからの判断になるが…行けるか?」
「うん。」
二人が頷きあって歩き出そうとすると…
「にゃあ!」
テナが不満げに声を上げた。
「ああそうだ、エメラとテナが、ガルザを掘り出すのを手伝ってくれたんだ。助かったよ。」
「あ!そういえば土の拘束を解くの忘れてた…ごめんね。ふたりともありがとう。」
キースに謝りつつテナを抱き上げ、よしよしと撫でるアルト。
「どうってことないわ。」
「にゃあ~!」
アルトに撫でられて満足げなテナと、アルトの肩に腰掛けながらニッコリと笑うエメラ。
「謝るこたぁないが、次は仕留めたら拘束を解いてくれると助かるぜ。」
「うん、気をつけるよ。」
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