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番外編 冒険者ギルドのざわめき(2)

〈備品管理課のとある先輩と後輩との会話〉

「はー…ギルマスにどやされたよ。」


「ギルマスに?どやされるほどのミスなんて、先輩にしては珍しいですね。」


珍しく項垂れる先輩職員に、驚いた表情で問いかける後輩職員。


「それが…模擬戦用の大斧の柄が折れた、管理や手入れが甘いんじゃないのかって。」


「えぇっ!大斧って、あの大斧ですか?柄なんて私の手首くらいありましたよ。」


「そう、その大斧。ちょっと振り回したらポキッといったぞって、ほら…。」


そう言って机に掛けた布を捲って見せると、現れたのは見事に折れた模擬戦用の大斧。


「うわぁ…本当だ。」


ポツリと漏らしながら、無意識に自分の手首を擦る後輩職員。


「今までこんなことなかったのに…というかギルマスが使うなんて想定外だったよ。あの人が振るえば、どんな武器だってすぐに壊れるさ。なんせ腕力が桁違いなんだから。」


そう言ってギルマスの鍛え抜かれた筋肉と、大剣裁きを思い出す先輩職員。


「それって、地下試験場の的にできた大穴と何か関係があるんですかね?」


「的?」


「あ、先輩はまだご存じなかったですか?備品管理課は今その話題で持ちきりですよ。」


そう言われて周囲をキョロキョロと見回してみると、確かに皆どこかざわついている。というか何だか…浮足立っている様子だ。


「的って、弓なんかの飛び道具使いや魔法使いの試験用の、あの的?」


「そうです。」


「あれって確か、新品に替えたばかりだったはずだけど…え、大穴?」


「はい。私もさっき見て来ましたけど、真ん中にこんな直径2メートルはある大穴が空いて…というか、ほとんど枠しか残ってなかったですね、あれは。」


こんな、と言いながら腕を広げて話す後輩職員。


「え、何、まさかギルマスが振り回した大斧が折れて、それが飛んでいって的を破壊した…とか?」


その様子を想像してぶるりと震える先輩職員。


「いいえ。焼け焦げの跡があったので、的を破壊したのは炎魔法の類だと思います…たぶん。少なくとも、刃を潰した斧であんな壊れ方はしないかと。」


「じゃあ、壊れた大斧とその穴は関係ないんじゃないかな。」


「でもでも、ギルマスと誰かが地下で手合わせした、とかじゃないですか?」


身を乗り出して興奮気味に話す後輩職員。それに対して呆れ気味に言葉を返す先輩職員。


「仮にもしそうだったとして…ギルマスが模擬戦用の大斧を使ってるのに、相手がそんな大きな攻撃するはずないでしょ。」


そんな先輩職員の言葉にシュンとなる後輩職員。先輩は随分と落ち着いた思考の人物…現実主義者のようだ。


「というか、どちらにしても有り得ないよ、そんな魔法が使える人なんて。そもそも、あの分厚い的を破壊するどころか、穴を空けられた魔法使いさえ今まで一人もいないのに。」


「私もそう聞いていましたけど、実際に見ちゃいましたし…気になるなら、先輩も見てきたらどうですか?“未来のSクラス冒険者か大魔法使いの歴史の第一歩として、保存するぞーっ”て、皆さん盛り上がってましたから。」


「あ、ああ。そうするよ。」



〈素材の査定担当官たちの会話〉

「いやぁ~これは……凄まじいですな。」


「そうね。白金鹿プラチナディアの角なんて、久々に見たわ。」


このギルドに所属する査定担当官のトップ2――モノクルを着けた口髭の紳士と、神秘的な美女――は、目の前にある素材の山に目を輝かせた。


「おや、こちらはガルザが1、2…8頭ですか。随分と腕の立つ冒険者のようですが…はて、心当たりがありませんな。」


「焼け焦げの様子から察するに、炎魔法が得意な魔法使いを擁するパーティーでしょうか…ギルマス、こちらはどなたからの持ち込み品ですの?」


「悪いが、それは明かせない。それだけのモノだ…売って大金が転がり込んだと周囲に知られて、面倒事に巻き込まれたくないんだと。ただ、非合法に手に入れたモンじゃないってのは、俺(と精霊サマ)が保証するよ。」


「成程、委細承知致しました。」


「まぁ珍しい。今時そんな奥ゆかしい冒険者がいるのね。そこらにいる駆け出しのボウヤ達だったら、喜んで吹聴しそうなものだけど…」


女性の言葉に、こっそりと笑みを漏らすギルマス。


(ま、アルトはある意味というか、外見だけは文字通り“駆け出しのボウヤ”なんだがな。)


「それで、査定額はどれくらいになりそうだ?」


「これは…少しお時間をいただきたいですな。」


眉間に皺を寄せる紳士の様子に、ピクリと眉を上げるギルマス。


「ん?何か問題があったか?」


「問題…とは違いますが、私共だけでは値が付けられないものがいくつか御座います。」


「どういうことだ?」


紳士は軽く咳払いをし、口髭を撫でながら話し始めた。


「例えばこちらの白金鹿プラチナディアの角や青翠狼ブルーウルフの毛皮。これらは貴族方からの人気が高い上に、今や希少品となっています。当ギルドに記録されている数年前の取引価格では、参考にならんでしょうな。商人たちに確認しませんと…もしかするとオークションにかけられるやも…」


続けて、女性が一つの木の実を掌に乗せて転がしながら話す。


「それにこちらの…ニシャの実は新しい薬の材料として注目されています。貴重な薬ですので、市場価値は上がる一方ですのよ。この実一つで、馬付きの馬車一台くらいなら買えてしまうでしょうね。他の木の実も、珍しいものばかりですし。」


「な…」


想像以上の価値に驚きすぎて、ギルマスは危うくソファからずり落ちるところだった。


「査定をあなた達に依頼して本当によかった。査定に時間がかかることは、俺から持ち込んだ者に伝えておこう。くれぐれも、適正な価格になるよう査定を頼む。」


「かしこまりました。」


「勿論ですとも。ただ、買取りの後…これらを少々お借りしても構いませんかな?」


「理由によるな。」


ギルマスの簡素な返事に、紳士は大きく頷きながら答える。


「ごもっともです。どれも珍しい素材ですので、他の査定担当官達にも見せたいのですよ。本物を見てこそ学べることもありましょう。」


紳士の言葉にギルマスはなるほどと納得した。どの職業でも、後進の育成というものは重要だ。


「そういうことなら許可しよう。ただし…」


「ええ。勿論、お借りする素材の種類や数の管理は徹底します。良からぬことを企む輩がいれば、ギルドから叩き出しますのでご安心を。」


「それから、持ち込んだ方の詮索をしないように、とも言い含めますわ。必要に応じて依頼主の秘密を守ることも、私たちの仕事ですので。」


こちらの言おうとしたことを先回りしてくる二人に面食らいながらも、さすがはプロと頼もしくも思うギルマスだった。


「ああ。万が一にもそんなことはないように祈るが、一応頼むよ。」

読んで下さってありがとうございます。


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