第46話 初めての買い物
執務室から出たあと、受付でキースの依頼完了報告を済ませて報酬を受け取り、ようやくギルドを後にする一行。
アルトの冒険者タグと素材の買取り報酬の受け取りは、また後日になるようだ。
本来であれば、どちらも当日のうちに終わるはずである。
しかし、いきなりBランク冒険者、その上従魔の登録までするとなると、手続きにはそれなりに時間がかかるのだ。
素材の査定に関しては、量もさることながらその質――希少なもの、需要によって価格が細かく変動しているものなど――により、全てを正しく査定するには時間を貰いたいと言われてしまったのだ。
ギルドを出た一行は、とりあえず宿に向かうことにした。
「試験お疲れ様だったな、アルト。宿に着いたら少し休むか?」
「大丈夫だよ。それよりも、僕お腹すいちゃった。」
アルトがそう言った直後、ぐぅっとアルトのお腹が鳴った。
「はは、そうみたいだな。んじゃ、宿が取れたらさっきの出店で何か買って食うか!」
出店と聞いて、アルトはパッと目を輝かせる。しかし、すぐにシュンと眉尻を下げてしまった。
「あ…でも、僕まだお金が…」
「そんなの俺が出してやるよ!アルトの合格祝いと、パーティー結成祝いだ!」
「ええっ!そんなの悪いよ。」
「気にすんなって。大人として冒険者の先輩として、ちったぁいいカッコさせてくれよ。俺の顔を立てると思って、な?」
そう言って二カッと笑うキース。そんな言い方をされては、アルトもこれ以上食い下がれない。遠慮がちにではあるが、大人しくご馳走されることになった。
屋台で買った肉の串焼きやパンなどを頬張るアルトを見ながら、キースは考え込んでいた。
(11歳…子供扱いすべきか微妙なお年頃だろうが、それにしても甘え下手すぎるだろ。家庭環境が複雑だったのが原因だろうが、もうちょっと頼ったり甘えたり…できるような相手に俺がなんないと、だよな。)
食事を終えると、お腹がいっぱいになったテナは眠ってしまった。そのため、アルトが抱えて歩いている。
「ねえキース、宿ってこっちじゃなかったよ?」
「ああ。街に出たついでに、ちょっと買い物もしたいと思ってな。アルトは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。でも何を買うの?」
「とりあえずアルトの服と装備あたりかな。食料やポーションなんかの補充はまた次でいいか。」
あと今みたいなときにテナが入れるカゴかカバンな~と指を折りながら話すキースを、アルトは慌てて止める。
「え、でも僕お金が…」
「買取り報酬が貰えるのは、冒険者タグの発行と同時だろ?その後はすぐ冒険に出たいから、時間のかかりそうな買い物は先に終わらせとこうと思ってな。」
キースの言うこともわかるが、それでも表情が曇ったままのアルト。それを見たキースはアルトの頭をぐしゃぐしゃっと撫でながら、カラカラと笑う。
「心配すんな、さっきギルドで貰った報酬があるから、それくらいの持ち合わせはあるぜ。」
「そうじゃないよ!僕が使うものなのに、キースに買ってもらうのは変だよ。あの素材を売ったら結構な金額になるって、キースも言ってたでしょ?」
頑として譲らない様子のアルトに、小さくため息をつくキース。
「わかったよ、アルトって意外と頑固なんだな。んじゃ、今だけ俺が立て替え…貸しといてやる。んで、報酬が入ったら返してもらう。これでどうだ?」
「それなら、いい……かな。」
アルトは悩んだが、キースの言った「すぐ冒険に出たい」という言葉に後押しされて了承した。
「よし!んじゃ行こうぜ。俺が世話になってる武器屋と服屋、すぐそこだからよ。」
そして、アルトは生まれて初めて買い物をした。
キースにアドバイスしてもらった、首元が隠れるデザインの服。
サイズの合ったズボン。(背が伸びて丈が短くなっていたため。)
歩きやすくて丈夫な靴。
軽い革製の防具。
魔法石を付けるための革製アクセサリーやバングル。
そしてテナとエメラが入る用のカバン。
なかなかの荷物になったが、宿までは普通に持って帰らなくては怪しまれてしまう。
こっそりと【身体強化】の魔法を使いつつ、二人で手分けして荷物を運んだ。
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