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第41話 今更かよ

「ん-、これも見て貰った方が早いみたいですね。アルト、テナのハンカチを外してくれるか。」


「うん。」


「二人とも、落ち着いて見ていてくださいよ。」


アルトがハラリとハンカチを外すと、テナの額に角のような突起が現れた。爪や牙も少し伸び、見る人が見れば一角黒豹ホーンパンサーの子供とわかる風貌になった。


テナのその姿を見た瞬間、ダンテは息を呑み、ギルマスはもの凄い剣幕でキースに掴みかかった。


「おい、こりゃ一体どういうことだ。説明しろ、キース。」


「は、はい。話しますから、ちょ、離して…」


激高するギルマスをどうにか諫めようとするキース。しかし、ギルマスは地を這うようなドスのきいた声で更に捲し立てる。


「お前、街に魔獣を連れ込むことの意味を分かっているのか!?それも一角黒豹ホーンパンサーの子供だと?親がこいつを探して街に入ってきたらどうする?それでもお前はBランク冒険者か!」


ピリついた空気の中、二人の間に割って入ったのはアルトだった。


「待ってください。ギルマスさん、僕から説明します。」


「お前が?」


「はい。ですからキースを離してください。」


アルトとて、今のギルマスは怖い。正直、声も手足も震えている。

しかしアルトは、テナを引き受けた当事者として、ありったけの勇気を振り絞って話に割り込んだのだ。


「…わかった。」


覚悟を秘めたアルトの瞳と言葉とに、いくらか怒気を収めた様子でキースを離すギルマス。


座り直したギルマスが「話を聞かせてほしい」と促したところで、アルトは話し始めた。


テナとはガルザの群れに出くわした時に、偶然出会ったこと。

魔獣の子とは知らずに保護したこと。

親と出会えるまで一緒にいると約束し、名前を付けたこと。

ハンカチにかけた三つの魔法のこと。

そして、街に入る前にキースと交わした約束のこと。



全てを聞いたギルマスは、眉間にしわを寄せて長く考え込んだ。それは隣に座るダンテも同様だった。


「アルトの言い分はわかった。だが、いくら表面を取り繕っても、ソイツは魔獣だ。突然襲いかかってくるかもしれない。」


重々しく口を開いたギルマスは、先ほどよりも幾分か落ち着いた声で話す。


「それに、一角黒豹ホーンパンサーなら親への対処も必要かもしれん。死に別れならまだしも、もしも生き別れだったら、親は今頃血眼になってソイツを探しているだろう。」


「はい、キースからも聞きました。一角黒豹ホーンパンサーは親子の情が深いから、子供を連れて行くのは危険だって。でも、だからこそ僕が、テナをちゃんと親の元に届けてあげたいんです。」


ギルマスを説得しようと、必死に気持ちを伝えようとするアルト。


「少なくとも森で出会ってからここに来るまで、僕の魔力感知に引っかかる範囲ではテナの親らしき魔獣は見つかりませんでした。だから、冒険者として旅をしながら一緒に探してあげたくて…」


と、ここでダンテが話に割って入った。


「ちょっと待ってください。その魔力感知とは一体…?」


「?…えっと、魔力を感知するんです。周囲に魔獣…魔力を持つものがいるか、魔力の大きさや数はどれくらいか、ある程度なら把握できます。僕はエメラに教えてもらって、やっとできるようになったんですけど…あれ?」


大人三人が口をポカンと開けてあっけに取られているのを見て、アルトは首を傾げた。

三人共が何も言わず固まっているので、ヒソヒソとエメラに話しかけるアルト。


「ねえエメラ、君は生まれつき魔力感知ができたんだよね?」


「そうだけど、それは()()()()()なのよね。もしかすると、人間のマギアも普通はできないのかも…」


「えぇ?だったら僕、普通じゃないことしちゃったってこと?」


(((今更かよ))ですか)


アルトとエメラのヒソヒソ話は、バッチリとギルマス達三人にも聞こえていたようだ。

読んで下さってありがとうございます。


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