第39話 魔法のカバン
「さて、何から話すか…ああ、まずはそのカバンのことだな。アルト、ちょっと机に置いてよく見せてくれるか?」
「うん、いいよ。」
「そのカバンがどうかしたのか?」
机の上に置かれた、使い込まれた小さなカバンをじっと見る二人。一見、変わったところなど見受けられないが…
「実はこれ、アルトが作ったマジックアイテムなんです。」
「は?今、何と?」
「悪い、もう一度言ってくれるか。」
思いもしなかったキースの言葉に、耳を疑うダンテとギルマス。
「これはマジックアイテムです。元は普通のカバンだったそうですが、アルトが魔法をかけてマジックアイテム同然のカバンになりました。な、アルト。」
「えっと、そうです。マジックアイテムのことはよくわからないですけど、カバンにいくつか魔法をかけて便利なカバンにしたのは間違いないです。」
「まさか、そんな…」
「おいキース、冗談はよせ。マジックアイテムはダンジョンからの出土品。人の手で作れるようなものじゃない。常識だろう?」
あまりのことに絶句するダンテと、さすがに信じられない様子のギルマス。
アルトが不安そうな表情でキースを見ると、キースは安心しろとばかりにアルトの頭にポンと手を置いた。
「あー…まぁ、そうなんですけどね。こりゃ見て貰った方が早いか。アルト、中身を出してみてくれるか。売りたいって言ってた素材とかだけな。」
「うん、わかった。」
そう言ってアルトが小さなカバンから次々に物を取り出す様子を、呆気に取られて見ているダンテとギルマス。
あっという間に机の上はカバンから出てきたもので埋め尽くされた。アルトが倒した8体のガルザ、貯めておいた毛皮や木の実、森で採取した薬草などだ。
「これは…驚いた。ガルザ8体の討伐は、事実だったのですか。」
その話は誇張か作り話だとばかり思っていたダンテは、心底驚いた様子だ。
「だからそう言ったろう。というか、気にするのはそこなのか。」
呆れたようにツッコミを入れるキース。
「もう自分が何に驚いているのかもわかりません。それだけ、今日は驚かされてばかりですからね。」
「はは、同感だ。にしても…すごいな。その小さなカバンに、こんなに沢山のものが入っていたとはな。」
机の上の諸々をまじまじと見ながら、その容量に改めて驚くギルマス。
本当はもっともっと沢山入るのだが、空気を読んで口をつぐむアルト。
「このカバンは、どこかのダンジョンで見つけたことにでもしておくつもりです。こんなものが作れると周囲に知れたら、色々とマズい気がするので。」
「そうだな。それならいっそ、俺たちにも内緒にしておいてほしかったくらいだが。」
そう言いながらジト目でキースを見るギルマスと、うんうんと同意するダンテ。
「無茶を言わんでください。こんな秘密、俺一人で抱えられるわけがないでしょう。アルトの安全のために、口裏合わせなんかの協力頼みますよ。」
「わかった、協力しよう。だがアルト、人前では極力使わないよう気をつけろ。強欲な権力者やならず者に目を付けられると厄介だ。」
目を付けられると厄介…これはキースにも言われたことだ。田舎育ちのアルトには物の価値がイマイチわからないので、とりあえず信頼できる大人の言うことは素直に聞くことにする。
「はい、わかりました。」
「うん、アルトは素直でいいな。キースとはえらい違いだ。」
「放っておいてください。」
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