第37話 詠唱
「とまあ、今ここでしておく説明はこんなもんだな。何か質問はあるか、アルト?」
「えっと、ギルマスさんが試験の時に言っていた“詠唱”って何ですか?」
(((そこかよ。))ですか。)
アルトからの質問に、思わず心の中でツッコミを入れる大人たち。
「ちょっと待て。詠唱ってのは魔法の基本だろう?それも知らずにあれだけの魔法を行使って…どれだけ普通じゃないんだよ。試験の前に言っていたことも併せて、全部話してもらうからな、キース。」
「いやいや…気持ちはわかりますけど、先にアルトの質問に答えてあげてくださいよ。話はその後です。」
「またそれかよ…まあいい。詠唱ってのは…」
“詠唱”とは魔法を行使するための口上。呪文。
自分のもつ魔力を“魔法”として具現化し、行使するために必要な言葉のことである。
多くの…というか(アルトを除く)全ての魔法使いは、魔法を行使するためには詠唱が必須である。
「それなら、僕も一応“バリア”とか“ファイアクリエイト”とか言ってますけど…」
「いいや。俺が聞いたことのある詠唱は、そんな一単語で済むようなもんじゃなかった。」
アルトの言葉に、ギルマスは首を振りながら答えた。
「うろ覚えだが、確か…“我が魔力を以て敵を滅せよ…”とか何とか、そんな感じの口上だったはずだ。」
「え……僕…その、そういうの、全然知らなくて。」
アルトの言葉に、今度はダンテとギルマスが首を傾げた。
「本当に詠唱のことも知らなかったってのか?あの実力で?」
「通常、魔法使いを目指すマギアは、魔法関連の書物で学んだり、実際に魔法使いに師事し…コホン、教わったりして魔法を習得するものです。アルト君は、一体どのようにして魔法を学んだのですか?」
キースにジト目で見られ、素知らぬ顔で言い回しを変えつつ質問するダンテ。
「えっと…独学というか、自己流…です。僕の生まれた村は田舎だったので魔法に関する書物なんてなくて、手探りで訓練していました。」
それを聞いたギルマスとダンテは目を大きく見開いて驚いた。しかし、アルトの話を遮ることはせず、続けるように促した。
「それから、エメラのアドバイスで魔法に名前…詠唱?を付けるようになって、一緒に色々な魔法も考えました。…これだとエメラが僕の先生ってことになるのかな?」
話しながら思ったことを口にしたアルトに、エメラはにっこりと笑いかけた。
「それでもいいけれど、呼ぶ時は“エメラ”って呼んでね。私はこの名前が気に入っているから。」
二人がぽわぽわとした雰囲気を作っている傍らでは、ギルマスとダンテがヒソヒソと話をしていた。
「独学?自己流?そんな、冗談だろう…」
「ええ。よほど高名な魔法使いに師事していたものとばかり…もしかすると、師はいるが引退していて、存在を伏せるよう言い含めているとか?」
「有り得るな。アルトの使った魔法に関して聞いてみれば、何かヒントがあるかも知れない。」
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