第34話 予想外の出来事
「ふーーっ…【錬金】」
ギルマスが落ち着きを取り戻すよりも先に、アルトが動いた。
「なっ!?」
突然足元から出てきた鎖がジャラジャラと音を立ててギルマスの身体に巻き付き、拘束していく。
「この…っ!」
しかし、鎖が出現して一瞬で全身を拘束できたわけではない。鎖が上半身までもを拘束してしまう前に、ギルマスは大斧を右へ左へと大きく振り回し、鎖を振り払っていく。
しかし、その時――ベキッと鈍い音を立てて大斧の柄が折れた。
大斧の刃部分は、回転しながら勢いよく飛んで行ってしまう。
刃の飛んだその先には――キースとダンテの姿。
ギルマスが振り抜いた勢いそのままに飛んで行く大斧の刃。模擬戦用のため切れはしなくとも、あの重量のものがあの速度でぶつかっては、良くて骨折…当たり所が悪ければ死もあり得る。
「お前ら、伏せろ!」
足元がまだ鎖で拘束されているため、ギルマスは動けない。慌てて叫んだが、予想外の出来事に二人とも反応が間に合っていない。
(危ない!)
咄嗟にアルトは魔法を使った。
「【障壁】、【重力】!」
ズンッッッッ!
大きな音を立てて、大斧の刃が地面に落ちた…いや、めり込んだ。
土煙が舞い、ギルマスやアルトの方からは状況が見えない。
「おい、二人とも大丈夫か!?返事をしろ!」
身体は伏せたまま、恐る恐る顔を上げるダンテとキース。
「これは、一体…?」
土が【障壁】に積もってドーム状になった様子に、目を丸くして絶句するダンテ。
「あー…ははっ。さすがはアルトだな。大丈夫、二人とも無事ですよ!アルト、サンキューな!」
【障壁】と地面にめり込んだ大斧を見て、笑いを漏らしながらも土煙の向こうの二人に声をかけるキース。
「よかったぁ。」
「そ、そうか…」
ホッとした様子のアルトとギルマス。二人とも試験のことなどすっかり忘れて脱力している。
土煙が収まって状況を確認すると、ギルマスは目を見開いて硬直した。
無傷の二人。
地面にめり込んだ大斧の刃。
土埃が積もって形がはっきりと目視できる、透明なドーム状の何か。
そして、自らを拘束したままの鎖。
たっぷり十数秒ほど硬直したギルマスは、大きく息を吐いて切り出した。
「あー…ダンテ、もう試験終了でいいよな?俺も武器もこんなだし、続行は無意味だろう。」
ギルマスの言葉にハッと我に返ったダンテは、カチャリと眼鏡の位置を直す仕草をして咳払いをした。
「そう…ですね。では試合形式での試験はここまでとします。」
「だよな。それじゃ、悪いがこの鎖解いてもらえるか?」
「はい。」
アルトが鎖を解くと、ギルマスは解放されたとばかりに背伸びをしている。
「にしてもお前の魔法、色々と凄いな。二人を守ってくれたこと、本当に感謝してるよ。ありがとう。」
「えっと、どういたしまして…?」
ギルマスに頭を下げられ、あたふたと返事をするアルト。
そんな様子に一同が笑いながら階段へと向かおうとすると、ダンテが「待ってください。」と声をかけた。
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