第32話 信頼していますよ
「ああそうだ。ギルマス、アルトの冒険者試験が終わったら、またお時間をいただけますか。」
「おいおい、これ以上まだ何かあるのか?」
ギルマスは怪訝な表情で聞き返す。
「まぁ…ですが、それはまた後程。試験の結果が出た後で話しますよ。」
キースは先ほどの報告で、アルトが作ったマジックアイテムや魔法石のこと、そしてテナの正体については敢えて話さずにいた。
これらの件について話すなら、先にアルトの実力を示しておく必要があると判断したためだ。
そうでなければ、マジックアイテムの件は信じて貰えないだろうし、魔獣であるテナは一も二もなく街からつまみ出されてしまうだろう。
「おいキース、そんなに俺が信用ならないのか。」
そう言うギルマスの目は真剣だった。そのあまりの鋭さと気迫に、アルトもキースも背筋がゾクリとするほどだった。
しかし、キースは怯まなかった。
「命を預けるくらいにはあなたを信頼していますよ、俺はね。ですが…少なくとも、アルトにとってあなたは“今日初めて会った人”でしかないんですよ。」
キースも、普段の飄々とした雰囲気はなりを潜めている。真剣な眼差しでギルマスを見つめながら、静かに淡々と語った。
「地方の村で生まれ育ったアルトは、冒険者やギルドの存在を知りませんでした。そんなアルトに、ギルマスという立場の人間に対する一般的な認識――信頼感を、求めるわけにはいかないでしょう。」
これはキースなりに必死で考えた“それらしい理由”だ。まさか真っ正直に「多分信じて貰えないので、まずはアルトの規格外っぷりを見てください。」などと言う訳にはいかない。
「ですから、この先の話はアルトが冒険者として正式に認められた後で、“冒険者からの報告と相談”という形でお話しします。」
「ほー…お前も言うようになったな。」
二人の間に流れる、数秒の緊張。
「わかった。確かに、お前の言う通りだ。アルトはまだ一般人なんだから、全てを話せと無理強いするのは間違ってるな。」
ギルマスの表情がふっと和らいだことで、キースも安堵の息を吐く。
「ただし、試験が終わってアルトが正式に冒険者になったら、全て話してもらうからな?」
「わかってますよ。あと、アルトが怖がるのであんまり威嚇せんでください。」
しっかりと念を押すギルマスの様子に、キースは苦笑いしながら答えた。
「おっと、そりゃ悪かったな、アルト。キースが一丁前に隠し事なんぞするから、ついな。」
ギルマスはアルトに軽く謝り、豪快に笑った。
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