第30話 ギルマス
レカンタの街に辿り着いたアルトたち。田舎生まれのアルトは、街の大きさとにぎわいに驚いてキョロキョロと辺りを見回す。
「わぁ!人も建物もいっぱいだね。」
「ああ。後で案内するから、今はあまりよそ見しないでくれよー。迷子になると大変だからな。」
キースの言う通り、少し気を抜くとあっという間にはぐれてしまいそうな人の多さだった。細工物の露店や食べ物の出店などに気を取られかけていたアルトは、ぷるぷると首を振り、焦ったように返事をする。
「う、うん。わかってるよ。」
皆で人波に流されるようにギルドの支部に向かっていると、ちょっと強面の男性が話しかけてきた。
「おい、キース!やっと戻ってきたか。」
「げっ!ギルマス…」
予想外のタイミングでのある人物の登場に、キースは顔を歪ませた。
「ぎるます…さん?」
それがこの人の名前だろうか、と思ったアルト。
「えーっと…ギルマスってのは、ギルドマスターの略で、街にあるギルド支部のトップのことだ。俺みたいに、この街を拠点とする冒険者を統括してる。」
アルトが何か勘違いしていると察したキースがそっとフォローする。
「偉い人ってこと?」
「ああそうだ。で、ここレカンタのギルマスが俺、アレグロだ。名前では呼ばれ慣れてないんで、呼び方は“ギルマス”でいいよ。よろしくな。」
灰色の短髪で強面の男性――アレグロという名のギルドマスターはアルトの言葉に返事をしつつ自己紹介した後、視線をキースに移して言葉を続ける。
「キース、俺は二つ隣の街までの護衛任務を依頼したはずなんだが…随分遅かったな。それにそのボウズはどうしたんだ?迷子か?」
「違いますよ。話せば長くなりますけど、この子…アルトは俺の恩人で、冒険者志望の新人。実力は確かです。俺のパーティーメンバーになる予定なんで。」
キースはできるだけ手短に、淡々と説明する。
「おいちょっと待て。色々と聞き捨てならんのだが…あー、まあいい。後で詳しく聞かせろ。」
ギルマスもこの場所が往来のど真ん中であることを思い出したのか、この場でキースを問い詰めるような真似はしなかった。
「とりあえず、そこの…あー、アルトだったか?冒険者志望なら、俺も一緒にギルドまで行こう。いくらキースの推薦でも、試験は受けてもらう必要があるからな。キースの報告を聞いている間に試験を受けられるよう、手を回そう。」
ギルマスの言葉に、どうしようかとアルトが視線をキースへと向ける。頷きかけたキースだが、アルトが「目立ちたくない」と言っていたことを思い出し、首を横に振った。
「試験を受けるなら早い方が助かるんですが…アルトは、あー…ちょっと特殊でして。試験には俺とギルマスも立ち会った方がいいかと。」
「特殊?」
「ええ。それも含めて報告しますよ。アルト自身のことなんで、報告の席にアルトも同席させたいんですが?」
「ったく…その言い方だと断れないだろうが。わかったよ。その代わり、きっちり話してもらうぞ。あ、一つ気になってたんだが、その猫…」
ギルマスの言葉に、ビクリと反応するアルト。まさかテナが魔獣だとバレてしまったのだろうか。
「アルトの飼い猫か?冒険者になるなら、仕事の間は家で留守番させとけよ。ま、今からギルド支部に連れて行くくらいは構わんが。」
「わ、わかりました。」
どうやら普通の黒猫だと思われたようだ。アルトはふーっと息を吐いた。キースはそんなアルトをちょんと小突き、小声で「態度に出すぎだ」と指摘した。
こうして三人と一匹(と姿は見えないがエメラ)はギルド支部へと向かう。
ギルドに到着すると、ギルマスが受付で何やら話をしていた。数分ほど待った後、一行はギルマスの執務室へと通された。
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