第29話 目立ちたくない
テナと一緒に街に入れるようになったと安心したアルトだったが、今度は別のことが気になった。
「ねえキース、エメラは街に入っても大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫なはずだ。魔獣とは違って、精霊は歓迎すべき存在だからな。」
隣を歩きながら答えるキースの言葉に、アルトはホッと胸を撫でおろす。
「だが、人前に精霊が姿を現すのは珍しくてな。注目を集めちまうだろうから、街中では姿を隠しておいてくれると助かる。俺が目を覚ました時、確かエメラは姿を消していたよな?」
「注目されるのは…ちょっと困るな。エメラ、キースの言うようにできる?」
キースとアルトの言葉に、エメラは快く了承した。
「ええ、わかったわ。街の中では姿を隠して…アルトの肩にでも乗っているから、安心してちょうだい。あ、でも魔力は隠せないけど、大丈夫かしら?」
「契約精霊であるエメラの魔力なら、アルトの魔力と同調して紛れる…と思う。そういえばアルトは魔力、強い方なんだよな?俺はマギアじゃないから魔力を感じたりとかはできないが、いろいろ凄いのはわかるぜ。」
「うーん、そうなのかな?自分以外のマギアと出会ったことがないから、よくわからないんだけど…」
アルトの漏らした言葉を聞いて、キースは背筋に嫌な汗が伝うのを感じた。
色々と規格外なアルトのことだ。魔力の大きさも規格外である可能性は十分にあり得る。
「なあ、テナのハンカチにかけた【魔力遮断】ってやつ、アルト自身か持ち物にもかけられるのか?それか、魔力を抑えて生活するとか…」
キースの問いかけに、うーんと考えて答えるアルト。
「【魔力遮断】の魔法をかけることはできるだろうけど、魔力を抑えるのはどうかなぁ…でも、どうしてそんなこと聞くの?」
「あー…よくよく考えてみれば、アルトは自分がマギアだってことを他人には知られたくないんだろ?まぁその年で冒険者になっちまうと、さすがに隠しきれないだろうが…」
キースにそう言われてアルトははたと思い出した。
(そうだった、自分がマギアであることを伝えても大丈夫かどうか、相手をよく見て判断しないといけないんだった。)
「もしそうだったら、周囲にはマギアであることも、魔力も、正式に冒険者になるまでは隠しといた方がいいんじゃないかと思ってな。」
まだまだ世間知らずな子供である自分をフォローしようと、キースが色々と考えてくれていたことに嬉しくなるアルト。
「わかった!僕もしばらくは目立ちたくなかったし、そうするよ。」
「だったら、アルトが着けてるネックレスのチェーンに【魔力遮断】の効果を持たせるのはどうかしら?それなら私が肩に乗ったまま触れられると思うから。」
「そっか、エメラの魔力も隠さなきゃだもんね。わかったよ。」
こうして、アルトたち一行は魔力を隠してレカンタの街へと入ることにした。
街へと向かう道中、アルトの使う魔法の数々に、キースはまたもや度肝を抜かれることになった。
魔法での調理、【炎造形】で作りだしたナイフ、それに【飛行】の魔法など…それ以外にも、アルトとエメラは「思いついた」と言っては新しい魔法を試していた。
キースはその都度「もう何を見ても驚かないぞ」と半ば呆れたように言うのだが、またすぐに驚くことになってしまうのであった。
レカンタの街までは3日ほどの道のりであったはずなのだが、度々止まっては魔法を試したり、魔獣と戦ったり、薬草を採取したりしていたため、予想以上に時間がかかってしまった。
街に到着したのは、アルトたちが出会って6日後のことだった。
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