第27話 新しい魔法
それから一行は、キースの報告とアルトの冒険者登録のために、ギルド支部のあるレカンタという街を目指すことになった。
その道中、キースはふと頭によぎった疑問を口にした。
「なぁアルト、旅に出てから今まで、風呂とか洗濯はどうしてたんだ?」
「今は暖かいから、身体も服も水魔法で洗って、炎魔法や風魔法で乾かしてたよ。」
アルトの返事を聞いたキースは、ふむと少し考える仕草を見せる。
「なるほど…魔法って便利だな。いやな、無意識とはいえ光魔法が使えるアルトなら、【浄化】とかも使えるんじゃないかと思ったんだ。」
「【浄化】?」
アルトは首を傾げて聞き返す。
「ああ。服や身体の汚れなんかを綺麗にする光魔法だ。冒険者稼業は泥や砂埃で汚れることも多いし、旅の間は風呂に入るのも難しいからな。使えると重宝するぞ。」
アルトはふと自分の着ている衣服に目を落とす。不潔というほどではないが、洗っても落ちなかった泥汚れなどが所々についている。
「それに、使い手のレベル次第では毒や汚染を浄化することもできるらしいぞ。」
「へー!すごいね、それ。」
「アルトならきっと毒の浄化もできるようになるわよ。」
(俺もそう思ったが、本来ソレができるのは神官とか聖女くらいのレベルの光魔法使いなんだよなぁ。)
「ねぇアルト、今試してみたらどうかしら?街に入る前に、テナも綺麗にした方がいいでしょ?」
「へ?」
エメラの発案に、キースは目を丸くする。
「そうだね、やってみようか。まずは…【安全地帯】!」
周囲の安全を確保し、試しにと靴下を片方脱いで手に持つアルト。それにもう片方の手をかざしながら目を閉じ、スッと集中する。
「え、おい…」
「しーっ!」
まさかこの場で試すと思わなかったキースは慌てるが、エメラに静かにするよう指摘されて押し黙る。
「光魔法……汚れを綺麗にする……よし、【浄化】!」
パアァッとアルトの手元が輝いた。光が消えた後、そこには汚れがなくなって真っ白になった靴下。もう片方も脱いで比べてみると、その違いは歴然だった。
「できた!できたよ、エメラ!キース!」
魔法が成功したことに喜び、無邪気に喜ぶアルト。
「にゃ!」
「あはは、ごめんごめんテナ。」
自分も忘れるなと言いたげに鳴いたテナの頭を、アルトは優しく撫でる。
「さすがアルトね。おめでとう!」
「えへへ、ありがとうエメラ。」
エメラに褒められ、照れるアルト。
「まさか一発で成功させるなんてな…つーか、こんな森の中で突然やるかよ、フツー。」
「あら、アルトはちゃんと【安全地帯】をかけてたわよ?」
「そう意味じゃ…いや、何でもない。」
キースとエメラがこっそりと交わす会話には気づかず、靴下と靴を履いたアルトは全身に魔法をかける。
「【浄化】!」
光が治まったあと、自身の衣服や身体のあちこちを確認するアルト。
「よし。ちゃんと綺麗になったし、痛かったり熱かったり、そういうのはないみたいだ。テナ、君にもかけてみていいかな?」
「にゃあ!」
「それはたぶん“いいよ”ってことだよね。あ、少し眩しいから目を閉じて。それじゃあ…【浄化】!」
三度目ともなると慣れたものである。
「もう目を開けて大丈夫だよ。」
「にゃ?にゃあ~!」
「とっても綺麗になったわね、テナ。」
「うん。真っ黒でふわふわ…撫でてもいいかな?」
「にゃあ。」
「わぁ…すっごくふわふわ。気持ちいい~。」
「私も私も!」
アルトとエメラがテナの毛並みを堪能していると、キースがあっという表情をした。
「な、なあ、…今更で悪いんだが、テナは子供とはいえ魔獣だ。だから、レカンタの街には連れて行けないかもしれない。」
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