第26話 旅支度
「よし!これでいいかな。」
満面の笑みのアルトと、ポカンと大口を開けて固まるキース。そしてなぜか得意げに胸を張るエメラと、その隣でエメラの真似をしているテナ。
「なあ、エメラ…アルトの魔法っていつもあんな感じなのか?」
「ええ、そうよ。随分驚いてるみたいね?」
「そりゃあ…な。」
キースはこれでもかというほど驚いているが、アルトは単に旅支度を整えただけである。
◇
まず、アルトは広げていた毛皮を拾い上げ、風魔法で簡単に土を落としてカバンに収納した。
次に、周囲の【安全地帯】とガルザの山の【障壁】とを解除した。
「キースは怪我が治ったばかりだからそこで待ってて。すぐ済ませるから。」
「あ、ああ。」
ガルザの山に向かっていったアルトは、自身に【身体強化】をかけてガルザの身体を持ち上げ、次々にカバンへと収納していった。
仕上げに炎魔法で血の痕跡を焼き払い、土魔法で地面をきれいに均した。
ついでにと土魔法の応用、【錬金】でキースが言っていたネックレスも作った。金では目立つらしいので、今回は銀で細い鎖を形作った。
◇
「よし!これでいいかな。」
指輪から魔法石を外し、ネックレスにつけ直したアルトはくるりと振り返ってキースの方に向き直った。
「どうかな、キース…って、あれ?どうしたの?」
「いや、うん。やっぱアルトは凄いなって思ってただけだ。気にすんな。」
ハッと我に返ったキースは、苦笑を漏らしながら説明した。
「凄い?」
「ああ。そのカバンも、アルトの使った魔法も、全部。」
カバンとアルトを順に指差し、最後にアルトの頭をポンポンと撫でるキース。
「そうかなぁ。」
(だろうなとは思っちゃいたが、やっぱ無自覚かよ。)
「ああ。そのネックレス、いい出来だな。首から掛けてみてくれるか?」
「こう?」
キースの言った通りに、首にネックレスを掛けるアルト。
「そうだ…よし、それなら服で隠れるな。ただ、動くと襟元から見えるだろうから…服も首が隠れるデザインのヤツにした方がいいかもな。」
「僕、この服しか持ってないよ。」
「じゃあ新しく買えばいいさ。さっきも言ったが、ガルザの素材やら他の毛皮やら、売れば結構な金額になるからな。」
服を買う。ものをお金に替える。
アルトはこれから訪れるであろう初めての経験に想いを馳せ、わくわくした。
「うん!それじゃあ…えっと、どこへ行けばいいの?」
「まずは、アルトの冒険者登録だな。冒険者ギルドへ行こう。」
冒険者登録と聞いて、アルトの目がパッと輝いた。
「ハハ、楽しみそうで何よりだ。俺も依頼の完了報告と、ガルザのことも報告しないとだからな。ギルドまで一緒に行こうぜ。」
「うん!ギルドってどこにあるの?」
「俺が拠点にしてるギルド支部は、ここから3日ほど歩いたところにある街――レカンタにあるんだ。」
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