第22話 キースの提案
「にしてもアルト…一角黒豹の子供に懐かれて、そのおさな…若さで治療魔法も使えるマギアで、契約精霊がいて、おまけに強くて金持ちってなんだそれ。反則だろ。」
「反則なんかじゃないわよ!アルトの才能と努力があったからだもの!」
「エメラ落ち着いて。えっと、キースさん?僕、そんなにすごくないですよ。それに、お金持ちなんかじゃないです。むしろ持ってないです。」
アルトは両手をヒラヒラさせて、キースの言葉を否定する。
「いや、ほぼ事実だろ。仮に今は金持ちじゃないとしても、その毛皮とガルザの素材を売れば十分な金になるさ。」
「あ、そっか。」
キースの言葉に、納得するアルト。
「あの、毛皮とかって、僕みたいな子供が持って行っても売れますか?」
「あー、なるほどな。確かに、ちょっと難しいかもなぁ。」
キースはアルトの頭のてっぺんからつま先までじっと見て、どう見ても10歳そこそこの子供であることを再度認識した。
どんなに規格外の魔法が使えても、強くても、一見するとアルトは普通の少年なのだ。
「やっぱりそうですよね……あ!もしよかったら、僕の代わりにキースさんが売ってきてくれませんか?」
アルトは良いことを思いついたとばかりに提案した。
「あん?」
「だめ…ですか。」
キースの険しい表情に、アルトは意気消沈してしまう。
その様子を見たキースは、大きなため息をついて頭をガシガシと掻く。
「はぁー。アルト、お前は人を信用しすぎだ。俺が悪い奴だったら、売り上げ全部持って逃げちまうかもしれないんだぞ?」
「キースさんはそんなことしませんよ?良い人ですから。」
あっけらかんと言ってのけるアルトに、キースは頭を抱える。
「だーかーらー!なんでそう信じきってんだよ。俺ら会ってまだ一日も経ってないんだぞ!」
「だって、キースさんははじめにポーションの代金を払うと申し出てくれましたし、親切に色々と教えてくれました。」
「それも信用させるための演技だったら?騙そうとする奴は、たいてい善人のふりして近づいて来るんだぞ?」
アルトはキースの指摘に驚いた。
嫌な人や悪い人は悪意を隠さないものだと思っていたからだ。良い人のふりをして信用させて、それから騙す。そんな狡猾な悪人に出会ったことがなかったため、その発想には至らなかったのだ。
「それは、まあ、考えてなかったですけど…本当に悪い人なら、こんな風に注意しないですよ。」
「…」
アルトからのもっともな指摘に、キースはぐっと言葉に詰まる。
「それに、さっきの精霊の話…もしもキースさんが悪い人だったら、エメラが気づいて教えてくれるはずです。」
「任せといて!あ、もちろんキースは大丈夫。ちゃんと良い人よ。」
「お、お前ら!面と向かって良い人とか言うな!照れるだろうが!!」
顔を真っ赤にして叫んだキースは、はぁはぁと肩で息をしている。それを見てアルトとエメラは思わず笑ってしまった。
数回深呼吸をして落ち着いたキースは、改めて切り出した。
「お前らが俺を信用してくれてるのはよくわかった。それは嬉しい。だが、俺が代わりに素材を売りに行くってのは、やっぱりダメだ。」
「どうしてですか?」
「今回はそれでどうにかなっても、今後似たようなことがあったときにアルトが困るだろ?」
キースの言葉に、アルトはなるほどと納得する。
「そこで、俺から提案なんだが…アルト、冒険者になって俺と組まないか?」
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