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第20話 にわかには信じがたい

「あー、なんか耳がちょっとおかしかったみたいだ。悪いが、もう一回言ってくれるか?」


想像もしていなかった言葉に、文字通り耳を疑ったキース。


「えっと、ガルザの群れはもう僕が倒しちゃいました。」


しかし、当然ながらアルトの返事は先ほどと同じである。


「……は?」


キースの反応から、自分が何かマズいことをしでかしてしまったのかと心配になるアルト。


「で、でも、キースさんが弱らせてくれていたからですよ!おかげで割と楽に倒せました!」


フォローになっているのかいないのか微妙なアルトの言葉に、キースの頭は更に混乱する。


「楽に?…いや、ちょっと待て。俺の記憶に間違いがなければ、ガルザは8頭いたはずだよな?」


「はい。確かに8頭いました。」


「だよな。んで…8頭全部、倒したのか?そこのエメラと一緒に?」


キースはエメラの方を指差しながら、恐る恐るといった様子で尋ねる。


「違うわ。アルト一人でよ。あのとき私はテナの傍にいたから。」


「にゃあ。」


「え?」


またもや予想外の返事に、混乱を深めるキース。


「疑うのなら、あっちで山になってるガルザの身体を調べてみればいいわ。アルトは炎魔法で倒してたから、焼けた跡とかがあるはずよ。」


エメラの指す方向――バリアの外には、積み重なったガルザの山。遠目に見ても、エメラの言う通り所々に焼け焦げがあるのがわかる。


それを見たキースは息を呑んだ。


キースとて、今更この二人が嘘をつくなどとは思っていない。が、子供がたった一人で8体ものガルザを退治したという事実は、にわかには信じがたいものなのだ。


「……マジか。」


「えっと…はい、そうです。」


驚きを隠せないキースの問いかけに、遠慮がちに返事するアルト。


少しの間考え込んだキースは、ぱっと顔を上げてアルトの肩をポンポンと叩いた。


「アルト、お前やっぱすげぇわ。お前は俺がガルザを弱らせたおかげだ、なんて言ってくれたが、8体を相手に俺が与えられたダメージなんて微々たるもんだよ。ホント、助けてくれてありがとな。」


何を言われるのかとドギマギしていたアルトは、キースからの賛辞に面食らってしまった。


「えっと、僕…」


「あー、悪い。俺の反応でまた不安にさせちまったみたいだな。さっきも言ったろ?凄すぎて驚いたって。今のもそれだ。」


キースはバツが悪そうに頭をガシガシと掻きながら、苦笑いを浮かべる。


「何も悪いことなんかしてねぇんだから、そんな表情かおしなくていいんだよ。むしろ“凄いだろ”って胸を張るとこだぜ。」


キースはそう言って、強張っていたアルトの頬をつまみ、上に引っ張って笑顔を作らせようとする。


「ひゃ、ひゃにすうんれすか!」


「あっはは!そうそう、そっちの方がずっといいぜ。」


「ちょっと!アルトに何するのよー!」


「にゃあ~!」


アルトを助けようとしたのか、アルトの肩に乗っていたテナがキースの手を引っ掻いた。


「痛っ!」


「もう!はーなーしーなーさーいーよー!」


テナに便乗したのか、エメラはキースの髪を引っ張りはじめた。


「うわっ!ちょっと待て。わかったから引っ張るな、引っ搔くな!!」


「テナ、エメラ、僕はもう大丈夫だから!」


アルトが慌てて止めに入ると、テナは引っ掻く手を止めて不思議そうに首を傾げる。


「にゃあ?」


「ふたりとも助けてくれてありがとう。でも、キースさんは僕を元気づけようとしてくれたんだよ。だからもうやめようね。」


「にゃ!」


元気よく返事をするテナに、思わず笑みをこぼすアルト。


「ふふ、わかってくれてありがとう。」


「アルトがそう言うならいいけど…もしまたアルトに乱暴したら許さないわよ!」


「はいはい、わかったって。」

読んで下さってありがとうございます。


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