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第2話 おばば様

「おばば様、“魔力持ち(マギア)”ってなあに?」


「おや、アルトにはまだ話していなかったかね。マギアっていうのは、“魔力持ち”のことさ。その名の通り、魔力と呼ばれる力を持っているんだ。力を使いこなせれば、魔法で火や水なんかを出すことができるそうだよ。」


おばば様の言葉に、アルトは目を輝かせた。

魔法――自分にそんなことができるのかと思うと、嬉しくなった。


「すごいや!それじゃあ、早く帰ってパパとママと兄さんに教えなきゃ!」


そう言って駆け出そうとしたアルトを、おばば様は呼び止めた。


「ちょっとお待ち、アルト。」


「どうしたの?」


「自分がすごい力を持つマギアだと知って、嬉しい気持ちはわかる。アルトにそんな力が宿っているとわかって、おばばも嬉しいよ。だけれど、このことは二人だけの秘密にしよう。」


おばば様は一言一言、言い含めるようにアルトに語り掛けた。


「どうして?」


どうして、おばば様はそんなことを言うんだろう。

僕が魔法を使えると知ったら、両親は喜んでくれるかもしれない――兄さんと同じように、僕のことも大事にしてくれるかもしれないのに。


はっきりと反論はしなかったが、モヤモヤとした気持ちがアルトの心を占める。


「マギアっていうのは、珍しいんだよ。現に、これまでにこの村でマギアが生まれたなんて、聞いたことがないからね。だから、良い意味でも悪い意味でも、注目を集めてしまうだろう。」


注目を集める――この言葉に、アルトはビクリと反応した。

今でさえ、アルトは“変わった子だから家族から除け者にされている”と、村の人々からは遠巻きにされがちなのだ。


「アルトのように素直にすごいと言える人、マギアのことを知らずに酷いことを言う人、アルトのことを騙してマギアの力を利用しようとする人――色々な人がいるかもしれない。だからこんな田舎では、力のことは隠しておいた方がいいのさ。」


幼いアルトには、おばば様の言っていることは少し難しかった。それでも、おばば様がアルトのことを思って言ってくれていることは伝わった。


いつの間にか、心のモヤモヤは晴れていた。


「うん、わかったよ。僕がマギアだってことは、おばば様との秘密にする。パパやママにも言わないよ。だけど…」


「?」


「力のことは、どうやって隠せばいいの?今まで起きたことも、ぜんぶ勝手にそうなったんだよ?」


「そうだったね、大切なことを言い忘れていたよ。力ある者は、その扱い方を覚えなきゃいけない。」


おばば様が“大切なこと”と言うのならきちんと理解したいアルトだが、またもや難しい話のようだ。


「どういうこと?」


「アルトの言う通り、マギアの力は今のところ無意識で発動しているみたいだ。でもね、そのままじゃいけない。」


おばば様はゆっくりと言葉を選びながら、アルトに大切なことを伝える。


「今は少し風を吹かせたり、物を浮かせたりするだけみたいだけれど、いずれは勝手に火や水が出てしまうかもしれない。」


火や水を出す…その情景を想像したアルトは少しワクワクした。


「そうなると、アルト自身や他の誰かをケガさせてしまったり、大切なものを壊してしまったりするかもしれないんだ。」


おばば様の言葉に、アルトは目を見開いた。


「えぇ!僕、そんなの嫌だよ!」


アルトの反応に、おばば様は目を細めて嬉しそうにする。

家族から蔑ろにされているアルトが、他者を害することを望まない優しい子に育っていることに安堵したのだ。


「それじゃあ、マギアの力を制御するーー思い通りにできるように、訓練をしようね。」


「うん!何をしたらいいの?」


アルトの疑問はもっともだった。

しかし、残念ながらおばば様はマギアではないので、魔力の使い方も訓練の仕方も、具体的なことは教えることができないのだ。


「王都や大きな町になら、魔法に詳しい人やマギア、そういう本なんかもあるだろうけれど、ここは田舎の小さな村だからねぇ。」


それから、二人は試行錯誤しながら手探りで魔法の訓練をはじめた。



アルトが初めて魔法でロウソクに火を灯したとき、二人は手を取り合って喜んだ。


どうやら、魔法を使うには強いイメージが必要だということがわかった。また、魔法を使うとどっと疲れるため、体力もつける必要がありそうだった。


マギアの力を制御できるようになるまでの道のりは遠そうだったが、アルトは着実に成長していった。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m


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