第180話 遺跡型のダンジョン
「さてっと、みんな準備はできてるな?」
キースの問いかけに、大きく頷くアルトたち。
「んじゃ、出発しますか!」
件のダンジョンへは、ギルマスの言った通り歩いて半日ほどで到着する。
初めてダンジョンに入るホルンのために、キースはダンジョン内での注意点やありがちなトラップなどについて説明しながら歩く。
キースの説明にうんうんと素直に頷き、時に青褪め、時にわくわくと目を輝かせ…表情をくるくると変えながら歩くホルンに、一行はほっこりと表情を緩ませるのだった。
◇
そうこうしているうちに、ダンジョンの入り口に到着したアルトたち。
以前に入った洞窟型のダンジョンとは異なり、このダンジョンはまるで人工物――遺跡型だ。
各階層のどこかに階段があり、下の階層へ下の階層へと進んでいくタイプらしい。
そして、現在確認されている最下層――28階層に、ギルマスや他の冒険者が言っていた“開かずの扉”があるのだ。
「28階層までは地図があるから、それに従って進もう。ただし、地図は未完成だ。地図にはない、未発見の部屋や道もあるだろう…そういう場所にはお宝もあるかも知れないが、それと同じくらい危険もある。十分注意して、勝手な行動はしないように。」
キースの言葉に頷きながら、ゴクリと息を呑むホルンとアルト。
そんな二人の肩をポンと叩き、ニッコリと微笑むレシェンタ。
早く行こうと急かすエメラと、それを諫めるコハク。
そして、みんなの足の間をすり抜けるようにアルトに近づき、スリスリと頭を擦りつけるテナとアース。
みんなの緊張が解れ、それでいて程よく集中できたところで――キースを先頭に、一行はダンジョン内へと進む階段を下りていった。
ギルマスの言葉とキースの予想通り、ダンジョン内を難なく進む一行。
経験豊富なキースの予測と直感でトラップを避け――
アルトや精霊たちの索敵で魔獣を回避し――
それでも避けきれなかった魔獣をあっという間に倒し――
瞬く間に20階層へと通じる階段まで辿り着いたアルトたち。
「次の階層――20階層はいわゆるセーフエリアだ。魔獣の出ない空間らしいから一旦そこで休憩するが…ま、一応警戒は解かないようにな。」
キースの言葉に頷きを返し、階段を下りていくアルトたち。
◇
キースの言葉通り、20階層は魔獣のいない空間だった。
階段の先にあったのは、ぽっかりと大きな部屋――ただそれだけ。
階層によって広さが異なるのも、ダンジョンという不思議な空間ならではである。
「笑えるくらいあっという間だったな。みんな、疲れてないか?」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべるキース。
「全然。手応えがなさすぎて欠伸が出そうよ。」
んんーっと伸びをしながら答えるレシェンタに、苦笑いを返すキース。
「お前はそうだろうな。ホルンは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。全然疲れてない!それより、キースもアルトたちも凄いんだね。トラップとか、アタシじゃ全然わからなかったもん…見つけるコツとかあるの?」
「あー、悪い。そういや見つけ方なんかは教えてなかったな。」
そう言って頭を掻くキース。
「余裕があるときは、トラップの痕跡についてなんかも教えながら進むようにするかな。」
「そうしてくれると嬉しい!アタシももっとみんなの役に立ちたいもん。」
目をキラキラさせるホルンに、ふむと少し考えるキース。
「そうだな…ホルンは俺たちよりも遠くまで見えるし夜目もきくから、いい斥候になれるかもしれない。」
「本当に!?」
「ああ。」
その時――
「みんな、ちょっとこっちに来て!」
少し離れたところから、アルトの呼ぶ声が聞こえた。
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