第178話 本当に大地狐?
一同がアースを取り囲んでいると、ドアのベルがカランカランと軽やかな音を立てた。
誰かが宿を訪ねてきたのだ。
慌ててフードを被るホルンと、彼女を隠すようにサッと立ち位置を変えるキース。
「お邪魔するよ……おや、皆さんお揃いみたいだね。」
入ってきたのは、いつも通りの柔和な笑みを浮かべたギルマスだった。
「あぁら、コーダちゃん。いらっしゃい。」
「何かありましたか。」
突然のギルマスの訪問に、思わず身構えるキース。
「ああ、大丈夫。今のところ問題はないよ。今回はレシェンタさんに用があってね。」
「それって、もしかして…!」
ギルマスの言葉にパッと表情を輝かせるレシェンタ。
「うん。君から要請のあった件について――警備隊長の許可も得られたよ。あとでギルドに来てくれるかい?」
「わかりました。後ほど伺います。」
「一体何を頼んだんだ?」
「ん-?ちょっと、ね。」
キースにそう答えてふふっと笑みを浮かべるレシェンタ。
「ふーん…」
その嬉しそうな様子に、なんとなく“要請”の内容を察したキースだった。
「ところで、そこにいるのは…?」
ギルマスが指さした先にいるのは、隣に佇む漆黒の一角黒豹とは対照的な――スラリとした純白の狐。
「「アースよ。」です。」
同時に答えてしまい、思わず顔を見合わせてクスクスと笑うホルンとアルト。
「アースって…え、例の大地狐の?」
「そうなのよぉ!とってもキレイになったでしょ?」
無心でアースの尻尾を撫でながら、なぜか胸を張るマズルカ。
「そうだね。というか…大地狐の体毛は確か、薄茶色のはずだったんだけど…白?」
「やっぱりそう思いますよね。」
「こう言っちゃなんですけど、本当に大地狐なのかどうか…」
「でも、間違いなく土属性の魔法を使ってたわよぉ?」
口々に疑問を口にする大人たちに、キョトンとした表情を向けるホルン。
「それって、そんなに大事なことなの?」
「うーん…狐種であることは間違いないから、従魔登録としてはそこまで問題にはならないんだけどね。」
滅多にないことだが、珍しい種族の魔獣を従魔にしているテイマーは、その素材や報酬欲しさに目が眩んだならず者に襲撃されてしまうことがあるらしい。
ギルマスからそれを聞いたホルンは、一部の人間の欲深さを改めて知り、身震いしていた。
「アースは僕の従魔として今後一緒に旅をする仲間だから、正しい種族名を知っておくのは大事なことなんだよ。習性とか生態とか、種族によっても少しずつ違うから…間違った対応をしているとアースにはストレスになっちゃうからね。」
「ふふ、パストーラさんの指導がよく身に付いているみたいだね。」
ギルマスに褒められて、ちょっと照れるアルトだった。
読んで下さってありがとうございます。
更新がどんどん不定期になりますが、完結まではちゃんと書くつもりです。
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