第161話 家族も同然
泣き疲れて眠ってしまったホルンを連れて、アルトたちとオオボエは近くの壊れた家に入る。
他の獣人たちは家族で語り合ったり、帰り支度をしたりしているようだ。
「ところで、父親の他にホルンの家族はいないんですか?」
レシェンタの問いに、ゆっくりと首を振るオオボエ。
「ホルンの母親は数年前に病死していて、兄弟もいない。母親は先ほどの墓地の…クラベスの隣に眠っているよ。」
オオボエの答えに、眉を歪めてきゅっと唇を噛むレシェンタ。
「なるほど…じゃあ、あの子はどうなるんだ?」
「新しい隠れ里にて、他の子らと一緒に育てる。血の繋がりなど無くとも、里の者全員が家族も同然だ。」
即答するオオボエに、安堵の表情を浮かべるキースたち。
「そうか。」
「その言葉が聞けて安心したわぁ。」
「ええ。」
「獣人の皆が一緒なら、きっと大丈夫だね。」
アルトたちがそれぞれに思いを口にすると、オオボエは照れくさそうに頭を掻いた。だがそれも一瞬で、すぐに思いつめた表情になる。
「そう…だな。後は、新しい隠れ里がまた心無い人間たちに見つかってしまわないことを祈るのみだ。この里も、どうして見つかってしまったのか…」
「確かにな。」
「たまたま見つかるような場所じゃないものねぇ。」
オオボエに同意するキースとマズルカ。
「ええと…獣人の皆さんは、全員が魔力を持っているんですよね。」
「ああ。お主らのように炎や水を出す術は知らんが、瞬間的に身体能力を上げる程度ならば子供たちもできる。その上がり幅の違いが、魔力量の違いなのだろうな。」
オオボエの返事にふむと頷き、考え込むレシェンタ。
「だとすると、精霊たちのような【魔力感知】が関連しているのかしら?いや、精霊が奴隷商なんて商売をする輩に加担するワケないわよね。アルトのような独自の魔法の線もあるけれど、可能性は極めて低い。だとすると、感知系や探知系のマジックアイテムを使って…?」
何やらブツブツと言い始めるレシェンタに、ぎょっとする一同。
「あ、こいつのことは気にしないでください。滅多にないんですが、稀にこうやって考え事に集中…というか没頭することがあるんです。」
そう言ってレシェンタを小突くキース。はっと顔を上げたレシェンタはバツの悪そうな顔をして、謝りながら頭を下げる。
すると、何かを思い立ったようにすっくと立ち上がるアルト。
「キース、僕ちょっと外に出て来るね。」
「ん?もしかして何かあったのか?」
反射的に身構えるキースに、慌てて手をぶんぶんと振るアルト。
「あ、魔獣の気配とかじゃないよ。ちょっと外に用事があって…」
「そうか。アルトなら何と出くわしても大丈夫だろうが、一応テナたちと一緒に行くんだぞ。」
「はーい!」
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