表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/188

第158話 警戒するのも無理はない

「さっきは悪かったな。そうとは知らずに、恩人たちを傷つけるところだった。」


エメラとベルから説明を受け、キースたちに深々と頭を下げるドラム。

精霊のエメラと、攫われたはずが無事な姿で帰ってきたベル。両者の説得により、彼はキースたちのことを信用したようだった。


「わかってくれればいいのよぉ。彼女のおかげで、怪我はせずにすんだしね。」


「仲間…それも女子供ばかりが攫われたんだ。俺たち人間を警戒するのも無理はないさ。」


そう言ってウインクするマズルカと肩をすくめるキースに、ほっとした顔をするドラム。


「そう言ってもらえると助かる。」


「それで、この里の惨状は一体どうしたんだ?何があった?」


「ああ。実は――」


ドラムの話はこうだった。


ベルたちが攫われた後、残された獣人の男性たちの意見は三つに割れた。


命に代えても攫われた者たちを取り戻すと息巻く者。

場所が知られてしまったこの里に留まることは危険だと、移動を提案する者。

攫われた者たちが自力で逃げ出すことに一縷の望みをかけ、この場に留まることを主張する者。


攫われた者たちを案じる気持ちは、皆同じだった。しかし人質を取るような人間が相手である以上、慎重な意見が出るのも無理からぬことだった。


議論は白熱したが、ある出来事を機に皆の意見がまとまった。

その結果、彼らはこの里を棄てて新たな土地に移住することを選んだのだ。


そして、もしも例の人間――奴隷商の仲間――たちがこの里を訪れた時のために、彼らは一計を案じた。

魔獣に襲われて里が滅んだと思わせるために、自分たちで建物を壊して回ったのだ。



「なるほど。それでこの有様ってわけねぇ。」


「どうりで里が半壊している割には、血痕の類が見当たらないと思ったぜ。」


ドラムの話を聞いて、納得したように頷くマズルカとキース。


「ああ、そこまでは頭が回らなかったな。次は気をつけよう。」


「むしろ“次”なんて無いことを祈りたいけれど。」


「それもそうだな。」


そんな軽口を言い合うベルとドラム。


「今の話だと、あなたや他の獣人たちはもう新しい里に住んでるのよね。それじゃあ、どうしてあなたはここへ来たの?何か忘れ物?」


エメラの言葉に、ドラムはボッと顔を赤くして俯く。


「よかったわねぇ。大切な“忘れ物”が見つかって。ベル(彼女)はあなたの奥さん?それとも恋人?」


「恋人だ………今はまだ。」


ドラムが小さく小さく零した最後の一言は、ウサギの耳を持つベルにだけは届いたようだった。

気恥ずかしくなったのか、プイッと顔を逸らすベル。

しかしその顔は桃色に染まっており、耳がぴこぴこと動いていた。


「ふふ、愛されてるのねぇ。」


ドラムの言葉が聞こえたわけではなかったのだが、二人の様子から何かを察したマズルカ。

彼の言葉に、更に顔を赤くするベルとドラムだった。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

ブックマークや評価、いいね等で応援していただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ