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第157話 霧の向こうから

エメラの指した方をバッと振り向き、さっとウサギ耳の女性を庇うように身構えるキースとマズルカ。

すぐに風を吹かせて眼前の霧を吹き飛ばそうとしたエメラだったが、濃い霧をただかき混ぜただけになってしまった。


ザリ、と霧の向こうから何者か…恐らく一人分の足音が聞こえた。

警戒を強めたキースとマズルカが、武器の柄を握る手に力を込めた次の瞬間――そんな二人の間をすり抜けるようにして、ウサギ耳の女性が前に歩み出た。


「おい、待っ――」


「ドラム、あなたなの?」


慌ててキースが止めようとしたが、それに構うことなく女性は霧の向こうの影に話しかけた。


「その声は…まさかベル?ベルじゃないか!どうしてここに…無事だったのか!?」


揺らめく霧の向こうから小走りで現れたのは、狐の耳をした獣人の男性だった。

ドラムと呼ばれた彼は、ウサギ耳の女性――ベルの顔を見るなり、駆け寄ってぎゅうっと抱きしめた。そして数秒の後、少しだけ身体を離してその顔をまじまじと見つめる。


一連の出来事を呆気に取られて見ているキースと、どこか微笑ましそうに見つめるマズルカとエメラ。

その視線に気づいたのか否か、慌ててドラムを引き剥がそうとするベル。


「ちょっとドラム、離して!私は大丈夫だし、他の皆も無事よ。説明するから、落ち着いて聞いて。というか離して。」


そう言いながらバシバシと叩いてくるベルを、名残惜しそうに離すドラム。


「ああ。ぜひそうして…っおい、人間共!よくもベルを、子供たちを…っ!」


ベルの後ろに立つキースとマズルカの存在に気づいたドラムは、彼らを物凄い形相で睨んで襲い掛かろうとした。


「ドラム、落ち着いてったら!この人たちは私たちを助けてくれたの。」


慌てて間に割って入ったベルが、攻撃を止める。


「離せベル!こいつらが……え?何だって?まさか、人間が?」


思いもよらない彼女の言葉に、虚を突かれたようにはたと動きを止めるドラム。


「ええ、そうよ。」


「うわっ!」


ドラムとベル、二人の顔の間にひょいと割って入るエメラ。

突然目の前に現れた緑色の光に驚き、ドラムは大きく後ずさった。


「ま、まさか、あなたは…精霊様?」


「その“様”っていうの、苦手なのよね…まぁいいわ。ええ、私は風の精霊、エメラよ。」


驚きの連続で頭がくらくらする感覚に陥ったドラムは、頭を抱えてしゃがみ込む。

そんな彼に、距離感を探りつつゆっくりと歩み寄るキースとマズルカ。


「「一体何があったのか、話してくれるか?」かしら?」


奇しくもマズルカとベルを見上げたドラムの声が見事にハモり、その場の全員が目を丸くした。

読んで下さってありがとうございます。


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