第16話 魔法の六属性
落ち着いたキースは、彼の知る一般的な“魔法”の概念について話した。
マギアの使う魔法の属性は、精霊のそれと同じ六属性――すなわち火、水、風、土、光、闇――のみとされている。
氷は水魔法の派生、雷は風魔法の派生とされており、治癒の魔法は光魔法の中でもかなり高度な魔法に分類される。
魔法使いの中でも火、水、風、土魔法を使える者は珍しくないが、光魔法を使えるものはごく少数である。
闇魔法は呪いや洗脳を主とする“悪しき魔法”であるため、一般の魔法使いには禁忌扱いになっている。国の認可を得たごく一部の魔法使いのみが“呪いや洗脳の解除のため”に研究することを許されている。
「俺が知ってんのはこんなところかな。」
「とてもわかりやすかったです、ありがとうございます。キースさんはマギアではないのに、よくご存じなんですね。」
アルトの真っ直ぐな褒め言葉に、キースが照れ隠しに頭をガシガシと掻きながら答える。
「あー…知り合いに結構な使い手がいてな。 アイツなら、もっと詳しく知ってると思うんだが、生憎と奴は多忙でな。」
「そうなんですね。」
「ねえ、ちょっといいかしら?」
真剣な様子のエメラが話に割って入った。
「どうしたの?」
「闇魔法が禁忌ってどういうこと?」
真顔でキースに問いかけるエメラ。どうやら、闇魔法の解釈が気にかかったらしい。
「えっと…さっきも言ったが、闇魔法は誰かに呪いをかけて苦しめたり、洗脳して操ったりできちまう危険な魔法なんだ。扱いには注意が必要だから、禁忌ってことになってんだよ。」
「そんなの、どの属性の魔法でも同じでしょ?暴風で家を飛ばすこともできるし、生き物は水で溺れるわ。火で火傷だってするし、土に埋もれれば窒息するし、強い光を直視すれば目が潰れることだってある。扱いに注意が必要なのも、容易に誰かを傷つけられるのも、闇魔法に限ったことじゃないわ。」
エメラの言うことももっともだ。彼女の勢いに圧倒され、キースはたじろいでしまう。
「そ、そりゃそうかも知れないけどよ…」
「それに、呪いだの洗脳だの、闇魔法でそんなことできないわよ 。闇魔法は本来、影や夜を司るものなの。」
「そうなの?」
そもそも魔法と精霊の六属性についてすら知らなかったため、次々と出て来る情報に戸惑うアルト。
「そうよ。影の中に隠れたり、誰かを眠りにつかせたり、そういう魔法なの。それを呪いや洗脳だなんて…闇の精霊が聞いたら、きっと怒ると思うわ。」
「そりゃあ初耳だが…俺個人はあまり魔法方面にゃ詳しくないんだ。悪ぃが今は話を戻してもいいか?」
「あ、はい。エメラもいいよね?」
「わかったわ。」
エメラは釈然としない様子だったが、ここでキースに食ってかかっても仕方がないと理解したようだ。
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