第155話 森の中
精霊たちが【魔力感知】で付近に魔獣がいないか警戒し、キースとマズルカは魔獣の痕跡や獣道を見つけては気にかけ、時折休みながら一行は森の中を歩く。
一刻も早く里に帰りたいという獣人たちの意見を尊重して、可能な限り最短ルートを進んでいく。
戦闘の際には、アルトは索敵と獣人たちの防御に徹することになっている。
そのため、それ以外のメンバー――キース、レシェンタ、マズルカ、エメラ、コハク、テナ――だけでは対処できない魔獣や群れが相手の場合は、迂回するつもりだった。
しかし、はっきり言ってそれは杞憂だった。
ソロでBランクにまで上り詰めた冒険者のキース。
宮廷魔導士のレシェンタ。
(本人曰く腕は鈍っているが)Aランク冒険者のマズルカ。
精霊のエメラとコハク。
まだ幼く戦闘経験は乏しいものの、体格も力もまるきり成体となった一角黒豹のテナ。
このメンバーで対処できない魔獣など、単体であればAランク以上の魔獣くらいだろう。
実際、この森に入ってから遭遇したCランク以下の魔獣程度ならば、その都度あっという間に撃退してしまった。
「さすがはAランクだな。それで腕が鈍ってるとか冗談だろう。」
「お褒めに預かり光栄ね。あなた達も中々やるじゃない。」
「そりゃどうも。お褒めに預かり光栄だね!」
そんな軽口を交わしながら、バッサバッサと魔獣を薙ぎ倒していくキース達。
そんな彼らの様子を呆気に取られて見ていた獣人たちは、キースやマズルカのことをいくらか見直したようだった。
獣人たちも戦闘に参加したがったが「これが護衛の仕事だから」「護衛対象に怪我されちゃ困る」とキースとマズルカが譲らず、特に子供たちはぶーぶーと不満を漏らしていた。
獣人は人間よりも身体能力や戦闘能力が高いためか、隠れ里でも老若男女問わず狩りに繰り出し、動物や弱い魔獣などを狩っていたらしい。
そこで、彼らには倒した魔獣の処理――討伐部位や希少な素材の回収や、食べられる肉の解体と調理――を手伝って貰うことで折り合いをつけた。
◇
街道沿いは馬車で行き、森の中は夜通し歩き、ほとんど足止めもなく最短距離を進んだだけあって、徒歩で4日かかるといわれた道をなんと2日半で踏破した一行。
アルトたちは、とうとう獣人たちの隠れ里に到着したのだ。
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