第15話 ポーション?
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「ああ、紹介がまだでしたね。彼女は一緒に旅をする仲間で、風の精霊のエメラです。」
「エメラよ…じゃなくて!アルトは凄いのよ!?あなたよりもずっと強いのよ!?アルトを侮辱したら許さないから!」
「エ、エメラ…気持ちは嬉しいけど、落ち着いて。僕は子供なんだから、心配されてもしょうがないよ。キースさん、すみません。」
アルトとエメラの様子を見て、キースは呆気にとられていた。精霊であるエメラを捕まえたり害したりする様子はなさそうだ。
「はぁ~やっぱりか。俺は精霊って初めて見たけど、純粋な子供には懐きやすいってのは本当なんだな。」
そう言ってアルトとエメラの様子をまじまじと見ていたキースだったが、ふと自分の身体を見て思い直した。
「いや、恩人を子供扱いは良くないな。アルトのおかげで命拾いしたよ。…それで、いくら払えばいい?」
キースの言葉にアルトは驚いた。
「そんな!お金なんて貰えませんよ。」
「いやでも、俺の傷が治っているってことは、アルトの持っているポーションを使ってくれたんだろ?だったらその分くらいは払わせてくれ。安いモンじゃないんだから、こういうことはちゃんとしないとな。」
「ポーション?」
「え?」
「「んんん?」」
ポーションとは、軽い病気や怪我を治すことのできる薬である。
魔獣討伐に限らず、危険な依頼を受けることの多い冒険者にとっては必需品。ちなみにキースは持っていたポーションをすでに使い果たしていたようだ。
「え?ちょっと待て。じゃあアルト、お前どうやって俺の傷を治したんだ?」
キースの問いに、アルトは逡巡する。自分がマギアであることを彼に打ち明けてもいいものか、と。
考えてみれば、彼は一角黒豹という魔獣の生態について教えてくれたし、アルトのことを心配してくれた。それに何より、今しがた「お金を払う」と言った。口調は荒っぽいが、根は良い人なのだろう。
そう判断したアルトは、意を決して口を開いた。
「魔法です。僕は【治癒】って呼んでいるんですけど…」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ!アルト、お前まさか“魔力持ち”なのか?え?ていうか魔法で治療ってことは光魔法?おいおい、だとすると相当な使い手じゃないか!?」
アルトの発言にキースはかなり驚いた。
アルトが希少なマギアであることもそうだが、それ以上に魔法で傷を治したというところに驚いたのだ。
「キースさん、とりあえず落ち着いてください。」
「あ、ああ。悪いな。」
アルトの言葉に諫められるキース。これではどちらが大人だかわからない。
「アルトの言う通りよ!魔法のおかげでバリアの外に声は漏れないけれど、ここはまだ森の中なんだからね?」
「声が外に漏れない?バリア?おいおい、何を言ってんだ。精霊とはいえ、魔法でそんなことできるわけがないだろ。」
キースの言葉に、顔を見合わせるアルトとエメラ。
「できるわけがないと言われても…」
「実際できてるんだもの。嘘だと思うなら、試しに腕を伸ばしてご覧なさい。」
「あ?こうか?」
キースは訝しがりながらも、エメラの言う通りに自分の隣の空間に手を伸ばす。
すると、指先に硬い感触が当たった。手の平で触れてみると、それは透明な壁のようなものだった。
「なんだこりゃ…壁?」
「そうよ。私とアルトで考えた自信作の魔法、その名も【安全地帯】!バリアで内部を守る、外部に音を漏れなくする、中の様子を見えなくする、三つの効果の複合魔法なの。」
「!?!?」
キースは更に驚いたようだが、声はバリアの外には漏れない。
「それで、キースさん。何にそんなに驚いたんですか?」
「全部だよ!!!」
キースの叫びは、バリアの中だけにビリビリと響いた。
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