第144話 不審な馬車
「ありがとうございました!また来ますね。」
「ああ。」
アルトは、滞在中に再度パストーラの元を訪ねて教えを乞うと約束をして、キース達と共に彼の家を後にした。
その帰り道――
「ん?」
道の真ん中で不自然に止まっている馬車と遭遇したキース達。
「どうかしたんですか?」
「い、いえいえ、何でもないんですよ。」
レシェンタの問いかけに、御者らしき人物がサッと荷台の布の合わせを閉じながら振り返って愛想笑いを返した。
「通行のお邪魔をしてしまってすみませんね、どうも。」
御者の男から視線を外して馬車に目を向けると、馬車の車輪が壊れて立往生してしまっていることに気づいたギルマス。
「おや、これは大変ですね。よければ荷運びをお手伝いしましょうか。」
「いえいえいえいえ!この荷物は大変貴重な品でして、何かあるとお客様とウチとの信頼関係に関わりますので…ご親切にどうもありがとうございます。馬車はこれから修理しますので、どうぞお気遣いなく。」
ギルマスの申し出に、慌てて手と首をブンブンと振る御者。
「修理するのも、おじさん一人じゃ大変でしょ?僕たちも手伝いますよ。」
「おじ…っごほん。」
おじさんという呼び方が気に障ったのか、男性は一瞬眉間に皺を寄せる。しかしさすがは商売人というべきか、咳払いで胡麻化してすぐに気を取り直す。
「問題ありませんよ。部外者が関わって荷物に何かあってはそちらの方が困るのでね。どうぞお先に行ってください。」
布に覆われた馬車の荷台をじっと見つめるアルト。
「アルト、どうかしたのか?」
キースの問いかけに少し視線をさ迷わせた後、遠慮がちに切り出すアルト。
「えっと…馬車の荷台から魔力を感じるんだ。それも結構な数。おじさん、一体何を運んでるの?」
アルトの言葉にピクリと反応するギルマス。
「へぇ、それは興味深いですね。ちょっと荷台を拝見しても?」
「だ、だからダメだと言っているでしょうが!何なんだあんたらは!?」
アルト達がいつまでもこの場を離れないことに痺れを切らしたのか、徐々に口調が荒っぽくなってくる御者の男。
「失礼、申し遅れました。私はこの町の冒険者ギルドを取り仕切るギルドマスターです。」
「!?!?」
「というわけで、ギルマス権限で荷台を検めさせてもらいます。苦情でしたら後ほどギルドまでお願いしますね。」
「ちょ、おい!よせ!!」
男が抗議の声を上げるが、それを無視してバサッと荷台の布を捲るギルマス。
「おやおや、これは……」
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