表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/188

第141話 アルトの覚悟

「テイムはそれなりに拘束力のある魔法だが、過信は禁物だ。テイマーと従魔との実力差、あるいは信頼感の消失、またはその両方により、テイムが無効となった事例は多数存在する。」


パストーラの言葉に、ギルマスはうんうんと頷いている。


「テイマーが未熟だと、成長した従魔が暴走することがあるのだ。そうなると、その従魔はもはや従魔ではなく、狂暴な魔獣と変わらん。主であったテイマーはもちろん、周囲の人々をも襲うだろう。」


以前にも似たような話を聞いていたアルトだったが、改めてテナをじっと見ながら考える。

頭によぎるのは、テナの母親であった一角黒豹ホーンパンサーが、自分たちに攻撃を仕掛けてきたときの光景――それを振り払うように、アルトはぶんぶんと頭を振った。


「それを止めるのも、テイマー…いや、そうなればもはやテイマーとは呼べないが――その者と、行動を同じくするパーティーメンバーの義務だ。万が一の時、貴様らはその一角黒豹ホーンパンサーを殺す覚悟はあるか。」


話の矛先が突然自分に向いたことで、ドキッとするキース。


(そういう可能性があることは承知の上だったが…ド直球で聞いてきたな。アルトとテナなら大丈夫だと思うんだが…それで納得してくれるかねぇ。)


「できません。」


「な!?」


この話の流れでキッパリ否定したアルトに、さしものパストーラも驚いたようだ。彼は眼帯をしていない方の目を大きく見開いている。


「万が一にも、億が一にも、テナを暴走なんてさせません。」


改めてはっきりと断言するアルト。

それをパストーラは子ども故の万能感や無鉄砲さと捉えたのか、思わず立ち上がって声を張り上げる。


「そんな保証がどこにある?大口を叩いておいて元従魔にやられた奴が今までどれだけいたか…そもそも、一角黒豹ホーンパンサーは成獣ならばAランクの魔獣だぞ。貴様、ランクは?」


アルトはゴソゴソと首に掛けていた冒険者タグを取り出し、パストーラに見せる。


「今はBランクです。」


アルトの返答に、パストーラは一瞬驚いた顔を見せる。


「まあまあ、とりあえず落ち着いて座りましょう…ね?」


ギルマスに諭され、大きく息を吐いて再び椅子に座るパストーラ。


「っ…その年にしては驚嘆に値するランクだが、まだ足りん。一角黒豹ホーンパンサーはAランクの魔獣の中でも、扱いが難しい部類だ。貴様にAランク以上の実力がなくては、いずれ制御しきれなくなるぞ。」


語気を強めて言うパストーラの言葉に、ごくりと息を呑むアルトとキース、そしてレシェンタ。


「もう一度問う。近い未来…その一角黒豹ホーンパンサーを暴走させないという保証が、どこにある?」


どう答えるべきか、しばらく考えるアルト。


(ふわっとした答えじゃ、この人は納得しない。レカンタのギルマスさんは、僕の実力はAランク相当だと言ってくれたけれど、実際はまだBランクのままだし…)


決心を固めたアルトは、マジックバッグから一冊の本を取り出した。


「これは…?」


「僕は“魔導の賢者”です。この魔導書は、トレモロのギルマスさん――“迅雷の賢者”から受け継ぎました。」


「!?」


このことを明かすべきか迷ったアルトだったが、これ以外に彼を説得できる材料が見当たらなかったのだ。


「僕はまだ魔導書を受け継いだばかりで、実力が伴っているかはわかりません。自分が賢者だって実感も、正直ほとんどありません。」


微かに声を震わせながら話すアルト。しかし、ギルマスもパストーラもキースたちも、真剣な眼差しでその様子を見守る。


「それでも、保証が必要だと言うなら――“魔導の賢者”の二つ名にかけて誓います。絶対に、テナを暴走なんてさせません。」


少しの沈黙の後、パストーラが重々しく口を開いた。


「賢者の二つ名……そんなものが保証になるとでも思っているのか。」


(ダメだった…!)


そう思ったアルトは、俯いて目をぎゅっと閉じた。


「わかっ――「この分からずや!」――何事だ?」


突如割り込んだ声が、パストーラの言葉を遮った。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

ブックマークや評価、いいね等で応援していただけると執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] …テナが暴走したときは殺せるのか?…の質問に対して… …確かに、話の印象からリアリスト(現実主義)なイメージのパストさん(と略しますね)なら名声にかけるってーのは…最悪、被害が死者を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ